新しくビニールハウスを建てて12年ほどになります。
台風被害も多い場所なので、強度の高い金属を使用して建てました。
そのおかげなのか、地震にもびくともしません。
しかし、最近になって急にグラつきだしました。建て替えのタイミングなのでしょうが、昨年に台風被害でフィルムが破れてしまい、すべて変えたばかりです。
できればあと最低でも2年は使いたいと思っています。
そこで、まずは自力で筋交いを入れて補強してみました。
しかし、それでも風による浮き上がりなどが気になります。
他に費用をかけずにハウスの倒壊や変形を防ぐ方法を教えてください。
(熊本県・村上さん/仮名・30代)
小沢 聖
明治大学黒川農場
ビニールハウスは適切なメンテナンスで延命できます。まずはボルトの締め直しから!
ハウスにはメンテナンスが必要です。
とくにハウスのメンテナンスのポイントは、ボルトの締め直しや接続金具の交換と、錆止めとなります。
台風などの強い風でハウスが揺すられた後には必ずボルトや金具が緩みますので、ハウス全体の確認と締め直しや交換をしてください。
風の向きによって緩みやすいポイントがあります。
妻面(つまめん/2つの屋根が山の形に合わさった側)からの風ではブレース(筋交)が、側面からの風では陸梁(おかばり/屋根部分の一番下に配置される部材)がとくに緩みやすくなります。
締め直しをする場合には、ブレースや陸梁部分だけを締め直しても意味はありません。
必ず骨材のボルトの緩みもチェックしてください。
ご相談者様の場合は急にグラついてきたようですが、まずは詳しい人にハウスの状態を見てみてもらうのがいいでしょう。
例えば横揺れするならば陸梁が効いていないなど、揺れ具合いによって問題箇所を指摘してもらえるはずです。
もしご自身でボルトを締め直すのであれば、締める順番に注意してください。
まずはじめに骨材と陸梁のボルトを締め直し、最後にブレースを締め直します。
ブレースの締め加減はスパン(ハウスの全体の形状)の歪みに影響しますので、必ず最後に。
そして締めすぎないように気を付けてください。
ボルトの確認の際、錆が見られる箇所にはシリコン製の錆止めスプレーを吹き付けてください。
ボルトの緩みを防ぐためには、ボルトとナットの隙間に瞬間接着剤をほんの1滴垂らすと効果的です。
ご相談者様のハウスは建設12年しか経っていないとのことですので、メンテナンスをして延命してください。
よく驚かれるのですが、適切にメンテナンスすれば鉄骨ハウスは50年は使えるはずです。
パイプハウスでも30年はざらにもちます。ぜひとも定期的にご自分でメンテナンスされることをおすすめします。
メンテナンスするにあたって意識してほしいのが、導入するハウスの種類です。
最近、鉄骨ハウスでは軒の高さが4.5mを超える「高軒高(たかのきだか)ハウス」が増えていますが、メンテナンスのことまで考えているのか心配になってしまいます。
高軒高は風当たりが強いので、ボルトの緩みや錆の被害が多くなるはずです。
かといって高所作業のメンテナンスは簡単にできません。
結果的に専門業者に任せることになり、経費が増えていきます。
私がおすすめするのは、骨材が細いフェンロー型ハウスです。連棟なので風に強いのが特徴です。
なによりボルトのメンテナンスがしやすく、さらに屋根が小さいのでフィルムの張替えまで自分でできてしまいます。
いざ台風での被害が発生した場合、ハウスの修理は広範囲にわたってしまいます。
業者さんはすぐに対応できません。
結果としてハウスの修理が間に合わず、1作逃したという話を少なからず耳にします。
だからこそメンテナンスしやすいハウスを導入し、メンテナンス上手になってください。