長野県で年間を通じて野菜や果物を作っています。秋にはシャインマスカットをインターネットで販売しています。
おかげさまでリピーターさんも多く、すぐに予約で完売になってしまいます。お客様に満足していただくために、昨年は品物と一緒にアンケートを同封してみました。
ありがたいことにアンケートの回収も7割以上で問題はなかったのですが、遠方のお客様から脱粒が発生していたと回答がありました。
現在はぶどう用のフルーツキャップを使い、箱に入れる際にもクッションとして網目の細かいフルーツマットで包むようにしています。
それでも一房に3〜5粒ほど脱粒しているケースが発生しているようなのです。
幸いにもお客様は気にされてはいないようですし、運搬の衝撃は仕方ないことだと思います。
しかし、脱粒をできるだけ防いで高級感を出せば、さらに商品価値を高めることができるのではないかと思いました。
フルーツキャップ以外で輸送にも強い包装方法を試行錯誤しながら模索しています。
妻から「3センチメートルほどのハート型のスポンジがあるから、それで包むといいかも?」とアイデアをもらい試してみましたが、クッション性は良かったものの、箱の中で品物がかなり動いてしまいました。
どうやら細かい緩衝材には無理があるようです。なかなか難しい問題ですが、いいアイデアはないでしょうか?
(長野県・田中さん/仮名・30代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
顧客満足度を想像しながら、リスクとコストのバランスを意識しましょう
ぶどう輸送の脱粒リスク、ほんと悩まされますよね。今回は脱粒防止に関わる生産者側の対策、さらにエンドユーザーの満足度の側面にも触れてみたいと思います。
まず生産者側の対応策としては、一般的にはフルーツキャップでぶどうを包み込む方法があります。
これ以外には「シュリンクフィルムでラップする(薄くしなやかなフィルムを筒状に加工してぶどうに被せ、ドライヤー程度の熱により房に圧着するという仕組み)」「房の形に繰り抜いたスポンジ素材で包む(特注品になり高価)」「特別な袋に入れる(背面が紙素材、表面が透明フィルムの袋でタイトに包む)」といった方法があります。
それぞれに手間の度合いや包材コストが異なりますので脱粒リスクと価格を天秤にかけて判断してみてください。
続いてエンドユーザー(お客さま)の満足度についてです。
忘れてはならない視点は「買ってくれた方が箱のフタを開けたときにどう感じるか?」という心理的側面です。
ぶどうに限らず果物や野菜はその姿カタチ、色合いが既にデザインされた完成形と言っても良いでしょう。
お客さんもそのような姿を期待しています。
もしフタを開けた瞬間、合成素材でがっちり包み込まれたぶどう(の一部)が現れた時の気持ちはどうでしょう。想像してみてください。
「ちょっと思っていたのと違う感」がよぎるのではないでしょうか。
高価なものであれば、なおさら見た目のイメージは重要になります。
生鮮食品のパッケージングでは「包めば包み込むほど生鮮感は失われていく」と言われています。
道の駅などの売り場で見られる「ざっくりした見せ方」が購買意欲を掻き立てるのは、中身がよく見える包材の醸し出す「生(ナマ)感」に他なりません。
品物の保護と顧客満足度のバランスを考える場合、拠りどころとなるのは「どこで?(道の駅、スーパー、デパート)」「どのような場面で?(自家消費、ギフト)」「いくらで?(リーズナブル、高価格)」という条件と見え方と包材コストの釣り合いです。
ぜひ、ほどよい着地点を見つけてください。