大阪府柏原市でぶどう農家をしている3代目です。2016年から露地とハウスで30アールほどの規模で栽培しています。
現在は夫婦2人でデラウェアを中心に、ピオーネやマスカットなどを栽培しJAに出荷しているほか、産直市場や直取引で都市部の青果店などへも販売しています。
最近、海外のぶどう畑で粉末の炭を土に混ぜて土壌を改良したという事例を知って、炭の導入に関心を持っています。
一般的に農業に炭を利用することは、化学的なものを使うよりはエコだというイメージを持っていますが、一方で「焦げたものを人体に取り入れると悪影響」という印象もあるので、不思議に思っています。
導入するのもそう難しくはなさそうですが、植物を燃やしてしまったあとの物体が、植物の栽培にどう有効なのか、まだいまいちピンときていません。
炭で土壌改良をするメリットについて詳しく知りたいです。
(大阪府・田中誠さん/仮名・40代)
日本バイオ炭普及会 事務局
日本バイオ炭普及会 事務局
ぶどう畑の水はけを良くし、pHを調整して、微生物が住みやすくする効果があります
「バイオ炭」とは、主に環境保全や土壌生物の活性化のために土壌へ投入する炭化物のことです。木炭、竹炭、畜糞炭など、幅広い生物に由来します。
バイオ炭の土壌改良効果は日本でも古くから注目され、使われてきました。地力増進法により「政令指定土壌改良資材」にも指定されています。
バイオ炭による土壌改良効果には、以下のようなものがあります。
(1)水はけ、水持ちを良くし、pHを調整する
(2)栄養素などを吸着・保持し、植物の根が吸収しやすい土壌環境を整え、植物にとって有益な作用をする微生物の棲みかになる
バイオ炭使用者から「根の張りが良くなった」という声をよく聞きますが、これは上記の効果により、根の周囲の土壌が改善した結果、発根が促進されたのだと考えられます。
ただ、バイオ炭は「強アルカリ性」なので、アルカリ性を嫌う植物へ使用する場合は、量や場所などに注意が必要です。
質問者さんはぶどう農家ということですが、ぶどうは通気性・通水性の良い土壌を好むとされていますので、バイオ炭はぶどう栽培と相性の良い資材だと思います。
近年では、果樹を剪定した際の枝を簡易的な方法で炭化し、バイオ炭を生産する農家さんも増えています。
特に山梨県では、行政主導で果樹農家へのバイオ炭生産を普及させています。
普及の背景には、「バイオ炭を土壌に施用することは、二酸化炭素の土壌中隔離(貯留)にもなる」と国内外で認識されていることもあります(IPCCガイドラインへの収載、4パーミル・イニシアチブ、J-クレジット方法論、AG-004 の発効など)。
バイオ炭の材料になる剪定枝が得られる果樹農家の皆さんは、バイオ炭生産の優れた担い手になっていくと思います。
最後に、バイオ炭のどこから入手するかについては、農地の規模や所在地、予算によって検討してください。詳しくは日本バイオ炭普及会へ問い合わせいただけましたら、アドバイスさせて頂きます。