宮城県で小松菜をはじめ、葉物類を栽培している新米農家です。
水稲を育苗から行っている大規模生産者さんに勉強しに行ったところ「育苗にグラニュー糖を薄めて散布している」という話を聞きました。
こうすることにより、植物が窒素を光合成で炭水化物に換える手間を省き、直接吸収させることで、生育や根はりを良くするということでした。
この方法は画期的だと思い、実際にその生産者の方はある程度の成功をおさめています。育苗中の生育だけでなく、定植後の活着も良好だそうです。
そこで、私の小松菜でも、同じようにグラニュー糖を散布すれば、生育が早くなったり、根はりが良くなるのではないかと思いました。
水稲で利用されるグラニュー糖の活用が他の作物でも代用可能なのか、教えていただけると幸いです。
(宮城県・沼田さん/仮名・20代)
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
グラニュー糖が影響を及ぼすことは間違いないですが、良し悪しがあります
水稲では、通常より種を多く播き、苗箱を少なくする「密苗」という技術があります。
密苗は、労力を軽減できる一方で、苗の活着がよくない、苗が溶けてしまうなどの問題がありました。苗が過密になってしまうからです。
植物が育つためには光合成が必要です。
光合成とは、植物が光エネルギーを使って、水と二酸化炭素から酸素と炭水化物を作ることです。
水稲の育苗において苗が過密になっていると、根元まで光があたらず、光合成が十分できず、生長によくありません。
そこで、根から栄養分を直接吸わせたらどうか?と思いついたわけです。光合成の結果得られる炭水化物を直接根にやろうという意図です。
これまで、「植物は有機物を吸わない」といわれていましたが、実はそうではないということがわかってきています。
質問者様は小松菜ということですので、水稲と事情は違うかもしれませんが、お答えします。
グラニュー糖を利用することにより、何かに影響することは間違いありません。
栽培技術はなんでも「いい方向の作用」と「悪い方向の作用」があります。
水稲と違い、小松菜は食べたときの柔らかい葉の食感が重要です。ですから、グラニュー糖の効果が出すぎると、繊維質が多くなり逆に硬くなってしまうかもしれません。
となると、与えるタイミングや量などを検討しなければなりません。水稲の場合は、苗の段階が効果的です。
新しい栽培技術を試し、期待したような結果にならないなら、理論の構築が間違っていることになります。
タイミングは生育の段階、収穫前などいつがいいのか、濃度はどれぐらいにすると良好な結果になるかを観察しながら、やってみてはいかがでしょうか?
同じ炭水化物でも、有機酸である酢酸は植物の乾燥耐性を向上します。つまり乾燥に強くなります。
これは、酢酸からジャスモン酸を作るためと言われ、与えた有機物は、それぞれ効率よく使われると言えます。
あと、アミノ酸も同様で、植物は有害なアンモニア態や、硝酸態などの無機窒素を炭水化物と結合してアミノ酸として無害なものにしてから利用されます。
この工程で、エネルギーとして炭水化物が消費され、合成の時点でも炭水化物そのものが消費されます。
最初から有機物で吸収させると、省エネで栽培することができます。また、窒素過剰も解消されます。
過剰な炭水化物は、作物を丈夫にするほか、ビタミンなど抗酸化成分を余り物として生産します。つまり、植物の生産物を搾取する人間には良いことが多いです。
最後になりますが、Youtubeで佐々木農業研究会のチャンネルもあるので、参考になるかも知れません。