果樹と野菜を栽培する農家です。
化学肥料はなるべく使わずに自然のものを利用して、有機栽培に取り組んでいます。
健康的で新鮮な野菜の美味しさを、多くの人に味わっていただきたいと考えています。
さて、これから冬を迎えると気温も低くなってきて、害虫も減ってきます。
すると、つい油断して防除も手薄になりがちです。
ところが最近「ハクサイダニ」の被害が目立ってきていると仲間から聞きました。
ハクサイダニにやられると、葉が灰色から銀色に変化し、いずれ枯れてしまうようです。
調べてみると、葉がやられてしまうと萎縮や芯止まりになり、結球野菜では作物の内部にも入ってくるみたいです。
有機栽培をしていますので、ほうれん草や小松菜などは特に影響を受けやすいとも思います。
ハクサイダニの生態と防除について教えてください。
(群馬県・佐藤さん/仮名・40代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
ハクサイダニは真冬も活発。こまめな駆除や夏場に過湿・高温・太陽熱が有効です
ハクサイダニは、夏を卵で過ごし、秋に幼虫が出現し、翌年の春まで活動するという生活サイクルを持つという特徴があります。また、真冬でも活発に動き回れる嫌な性質もあります。
寒い時期は、ハクサイダニの天敵となる生物の活動も弱まってしまいます。化学農薬を使わない有機栽培では、いかにハクサイダニの密度を減らすかがポイントになってきます。
対策としては、主に3つあります。
ひとつは、収穫した作物の残りの葉を、できる限り畑の外に持ち出すことです。収穫後の葉にはダニの卵が付着していることがあるので、汚染源を取り除く目的です。
次に、畑の周囲の雑草をこまめに取り除くことです。ハクサイダニは雑草でも増殖することがあるため、数を増やさないようにするのが重要です。
最後に、夏場に密度を下げることです。夏場は卵の状態で休眠しており、太陽熱消毒が有効です。
しかし、注意点もあります。土壌が乾燥していると、土壌が高温になっても死滅しないのです。
「乾燥した状態では、気温50℃で10日間維持しても、8割以上の卵が孵化した」というデータがあります。
そのため、灌水チューブを設置してからビニール被覆し、たっぷりと灌水することが有効です。
1㎡に100~200ℓが目安です。そうすると土壌が過湿状態になります。「過湿状態、気温45℃では、3日間で全滅した」というデータがあります。
また、「1日間でも、気温45℃で8割近くの卵が死滅した」という報告もあります。
水分が豊富な条件下で温度を上げるのが重要だということです。