新潟県で就農して5年ほどになります。
多品目の新鮮野菜を露地栽培し、インターネットで販売しています。
化学肥料をできるだけ使わず、いい土で作物を育てていきたいと試行錯誤を続けています。
現在の悩みは、土の性質です。
じつは重粘土質で、水はけがあまり良くありません。
当初は天気がいい日が続くと固くなりやすく、雨が多いと苔みたいなものが生えてくる状態でした。
耕すことでなんとか変えようと努力は続けてきましたし、それなりに現在は改良できてはいます。
しかし、まだまだ納得できる土にはなってはいません。
先日、ふとあることに気がつきました。
それは、うちの畑にはミミズが少ないということです。
いい畑にはミミズがたくさんいるような話を聞いたこともありますので、まずは試しに生きたミミズ(コンポスト用のシマミミズ)を購入してみようかと考えています。
そんな話を先輩に相談したら「豊かな土壌にミミズが多いって話はウソだよ」と笑われてしまいました。
実際、ミミズの多い少ないは土にどのような影響を与えるのでしょうか。
(新潟県・池田武志さん/仮名・30代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
ミミズは化学肥料やトラクターによってもダメージを受けてしまう
良い土とは、作物の生育が良い土となります。つまり通気性や排水性など土壌の物理性が良好で、窒素リンなどの養分が豊富な土です。
養分に関しては肥料で良い土は作れますが、物理性が良好な土を作るためには、堆肥などの有機物の施用が必要です。これが良い土の基本です。では、ミミズが生息する土とはどんな土なのでしょうか。
ミミズは作物残渣(作物の残りカス)そのものや、土壌に含まれる腐植(生物などの分解物)を餌とします。
有機物が多い土壌でのみミミズは生息できます。とはいえ有機物が多い農地であってもミミズはトラクターの刃や化成肥料によりかなりダメージを受けますので、必ずしもたくさん生息しているわけではありません。
つまり「豊かな土壌にはミミズが多い」というわけではありません。
ミミズを購入して畑に放しても、化成肥料を施用すると塩類濃度が極めて高くなり、その浸透圧でミミズは死んでしまいます。
つまり化成肥料を控えて、かつ、土壌の有機物含量を増やして土を豊かにしないと、いくらミミズを放してもすぐに死んでしまうだけです。
シマミミズはほぼ100%有機物の環境を好み、フトミミズは森林土壌のように地表面に豊富な落葉落枝があるような環境を好みます。
どちらも普通の畑土壌の環境ではないので不向きです。わざわざ購入してまでミミズを畑に投入するメリットはないように思います。
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
ミミズは自然に任せるのが一番。無理に増やすと逆効果になることも
ミミズは未熟な有機物を食べ、排出物は植物が利用しやすい完熟の有機物に変えていきます。そういった点で考えますと、落ち葉などを堆肥化するにはミミズは有効です。
しかし、だからといって畑に直接ミミズを入れても意味がありません。
例えばサツマイモ畑にミミズが多いとモグラが集まり、穴を掘ります。さらにそこに野ねずみが巣を作ってサツマイモを食べるという悪循環が引き起こされます。
土作りは、完熟した有機物を適度に入れ、春と秋にはしっかりと耕し、さらに連作をしないことが基本です。
人でたとえれば、良い食生活(堆肥)と適度の運動(耕耘)が健康の秘訣といったところでしょう。
収穫後の作物の根や葉などが残っていれば自然とミミズが発生しますので、自然に任せてください。
ちなみに我が家の畑にはミミズはほとんどいません。畑の環境とは人工的に作るものではなくて、自然との共生によって成立するものと考えてください。