北海道の専業農家です。先日、海外でジェネリック農薬が普及している話を耳にしました。
近所に農業に詳しい中国人の留学生がいるので、話を聞いてみたところ「母国では誰もが買えるくらい普通に販売されていた」と話しており、かなり驚きました。
農業を始めて10年以上経ちますが、日本では販売されているのを見たことがないどころか、これまでそんな話になったこともありませんでした。
我が家は米作農家で、除草剤を定期的に使用します。
ジェネリック農薬を使うことでコストが大幅に抑えられるなら、是非使ってみたいと思います。
今後、ジェネリック農薬が日本でも普及される見通しはあるのでしょうか?
また、使用に関してメリット・デメリットがあれば教えてください。
(北海道・小松さん/仮名・40代)
中村圭佑
FOODBOX株式会社代表取締役/CEO、フードカタリスト
法改正により、ジェネリック農薬は今後普及していく見込みです
おっしゃる通り、日本と比べて海外ではジェネリック農薬がかなり普及しています。私見ですが、中国では最低でも約70%以上がジェネリック農薬が使用されていると見ています。
日本でジェネリック農薬が普及してこなかった背景には、登録費用が高額だったことが大きく影響しています。
しかし、2018(平成30)年12月施行の「農薬取締法」の改正に伴い、ジェネリック農薬登録の規制緩和が図られました。
新法では、提出すべき試験データの免除が多くなり、従来よりもジェネリック農薬の開発費用が少なくて済むようになっています。よって、今後はジェネリック農薬の拡大が進み、よりコスト低減が進むと想定されます。
ジェネリック農薬のメリットは、生産コストを抑えることで「消費者に、より適切な価格で国産農産物を提供することができる」ことです。
しかし、ここで次の問題となるのが消費者目線です。農作物の価格が大幅に下がることで「農薬散布回数が増えるのではないか」との懸念が広がるのではないかと言われています。
医薬品においては、テレビCMなどでの普及活動によりジェネリック=安心といったイメージが定着してきています。
先例に沿って、ジェネリック農薬の安全性担保もオリジナルと変わらないことを消費者へ普及していく必要があるでしょう。
ホクレン農業協同組合連合会 肥料農薬部 農薬課
ホクレン農業協同組合連合会 肥料農薬部 農薬課
ジェネリック農薬は多岐にわたるメリットあり。積極的な有効活用を
ホクレン農業協同組合連合会の農薬事業では、安定的な農薬供給と価格の抑制を目指した活動に取り組んでいます。
その一環として、ジェネリック農薬の取り扱いにも力を入れております。
現在ホクレンでは、JAグループが開発したジェネリックの園芸用殺虫剤「ジェイエース」、マンゼブのジェネリック殺菌剤「グリーンペンコゼブ」、「ラウンドアップ」のジェネリック除草剤「クサトリキング」、「ベタナール乳剤」のジェネリック除草剤「ビートアップフロアブル」、以上の4剤を取り扱っています。
ジェネリック農薬は、先発農薬と比較して開発費用を軽減できることから、割安な価格での設定が可能となるため、生産者コスト低減に寄与できるものと考えております。
また、現時点の価格だけを比較した場合、先発剤と価格差がない品目もございますが、ジェネリック農薬の発売時には安価に設定できています。結果として、先発剤の価格を引下げることができていることから、
先発剤を含めた市場価格全体の引き下げ効果も期待できます。
私どもとしましても、生産者コスト低減を図るべく、今後ともジェネリック農薬の普及に向けて取り組んでまいります。