父と二人三脚で、主に直売所に出荷する野菜を年間50種ほど手がけています。
旬の作物をできるだけ長い期間出荷したいので、タイミングをずらすなど、自分なりの工夫はしています。
夏場はトマト、なす、ピーマン、秋冬は小松菜、白菜、落花生などがメインです。
露地栽培では、アブラムシやコナジラミ、ハダニやアザミウマなどの害虫対策は欠かせません。
以前から農薬を使っていますが、そのうち耐性がついてしまうのか、思うような効果が期待できません。
昨今の減農薬に対する意識の高まりもありますし、そもそも都市農業ゆえ、もうこれ以上農薬に頼るのもどうかと思うのです。
そこで、よく施設栽培では取り入れているところは多いかと思いますが、天敵による防除を始めようかと思うようになりました。
そもそも露地栽培においても、生物農薬の使用は効果的なのか、注意すべきことは何かを教えていただきたいです。
(千葉県・内海さん/仮名・40代)
上野高敏
九州大学大学院 農学研究院 生物的防除施設 天敵昆虫学分野 准教授
露地栽培で天敵防除は効果が不安定です。農薬を併用し対策しましょう
アブラムシ、コナジラミ、ハダニ、アザミウマは、野菜の4大微小害虫と言えます。化学農薬を使っても生き残る虫が出てきて、被害を完全に防げなくなることがあります。
害虫の天敵を使う「天敵防除」は、ハウス栽培でおなじみの方法ですが、露地栽培にも有効です。ただし、ハウス栽培ほどの効果は期待できないかもしれません。
せっかく天敵を放しても、自由に出て行けるからです。露地栽培では、餌となる害虫が少ないと、天敵の方がより良い環境を求め出て行きます。
逆に害虫が増えてから天敵を放しても、効果が出る前に被害を受けるかもしれません。
そこで、あまり移動しない天敵を放す方法、天敵が好む環境を作り出し、居つかせる方法が考えられます。
あまり移動しない天敵は、クサカゲロウやテントウムシ幼虫などです。天敵が好む環境を作る方法なら、種類ごとにさまざまです。
寄生バチなら花が咲く植物を植え蜜をなめられるようにする、ハナカメムシなら獲物が普段からついている植物を植えるなどです。ただし、植物に対して害のない生物を選びましょう。
天敵が居着かせるには、複数の品目を同時かつ継続的に栽培する方がおすすめです。ただ、トマト、ナス、ピーマンは近縁のため共通して、難防除害虫(防除が難しい虫)が出るので、効果が弱いかもしれません。
最後に、畑にどの程度の天敵がいるかを見定め、それほど数が多くないなら、天敵とあわせて天敵に影響の少ない農薬を使うのもいいでしょう。
天敵利用は理想的にみえますが、化学農薬より効果が不安定という欠点もあります。ですから、選択的に農薬を使いながら、天敵による補助効果を期待するのが現実的でしょう。