秋田の農家です。毎年収穫した大根でいぶりがっこを作っていますが、食品衛生法の改正で、これまでと同じように作るのが難しくなることが分かりました。
漬物が原因の食中毒が続いたことで、2021年6月に施行された「改正食品衛生法」で漬物製造業でも営業許可の取得が必要になったのです。
さらには専用の製造場所を設けたうえで、厳しい衛生管理を行わなければなりません。
これらの経過措置は3年あり、それまでに対策をとる必要があるのですが、調べてみたところ設備を整えるのに100万ほど費用がかかるようです。
「おいしい」と言って買ってくれるお客さんのことを思うと、体力がもつ限りいぶりがっこを作り続けたいと思っていました。
しかしもうすぐ80歳。これだけの費用をかけて改修しても後何年続けられるかわかりません。
また、今は自宅の中の小さな小屋で昔ながらの製法で作っています。専用の工場を設けたら、環境が変わって味に影響が出てしまうのではという懸念もあります。
昔ながらの製法や今の味を保ちつつ、いぶりがっこを作り続ける良い方法はないでしょうか。
(秋田県・田上孝志郎さん/仮名・70代)
公益社団法人日本食品衛生協会
公益社団法人日本食品衛生協会
漬物製造業を継続するなら営業許可の取得は必須。早めの取り組みを
2018(平成30)年の食品衛生法の改正において、営業許可業種の見直しが行われ、漬物製造業は営業許可を取得すべき業種となりました。
浅漬けによる食中毒事故の発生、健康志向による低塩製品の増加など、業界団体からの要望等を踏まえたものです。
営業許可の取得のためには、定められた営業施設の基準を満たす必要があります。
具体的には、衛生的な施設、設備を有すること、原料等の洗浄、漬け込み、殺菌設備を有すること、浅漬け製造の場合は冷蔵設備を有することなどです。
これらの施設・設備は、従来より製造を行っている施設では、当然有しているものと考えられます。
しかし今回の相談者さまのように、施設を設けず家庭での調理の延長で実施されている方は、これらの基準に対応しなくてはなりません。
これは製造を続けていくうえで、避けて通れないものです。
これらの規定は経過措置が設けられており、2024(令和6)年5月31日までに営業の許可を取得する必要があります。
対応を検討される場合は、まず製造施設を所管する保健所によくご相談ください。
また、施設設備の基準とは別に、衛生管理の基準も新たに設定されています。食品衛生責任者の設置やHACCPに沿った衛生管理の実施などです。
食中毒発生を予防するため、そして安全な食品を提供するために、お早目に取り組んでください。
全日本漬物協同組合連合会
全日本漬物協同組合連合会
共同作業場の新設や助成金の交付を県が検討中です
2018(平成30年)に、食品衛生法等の一部を改正する法律が交付されましたね。
食品の安全を確保するためや、食中毒に対する対策強化、事業主への衛生管理の向上が主な目的となっています。
また、食品による健康被害等の把握や対応を的確に行うとともに、食品リコール情報の報告制度の創設等の措置を講じるものです。
相談者さんがおっしゃる通り、今回はいぶりがっこや漬物もその対象となり、ご家庭で漬物を製造・販売する個人農家さんは窮地に立たされています。
設備についても、営業許可を取得して施設基準を満たさなくては今後いぶりがっこを製造・販売することはできません。
しかし、いぶりがっこは秋田の「宝」。
相談者さんがご高齢で、施設を新設する費用がないからとこの宝をなくしてしまうのは惜しい話です。
そこでどうにか伝統的ないぶりがっこを残していこうと、生産者から作業を受託して製造・販売を試みる食品会社が出てきているようです。
さらに、秋田県大館市の農産物直売所では共同作業場の新設を検討しており、県は改修費や助成金の交付を目指しているという話もあります。
あと3年間の経過措置の間に、状況が好転するかもしれません。前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。