コロナ禍で、特にひとり親世帯の家計が苦しいと聞きます。こうした世帯に対する支援として、フードバンクや子供食堂などの取り組みが行われているようですが、支援物資や料理の中に野菜や肉などの生鮮物はあっても、さすがに魚は少ないと思います。
また、肉に比べて値段が高く、調理の手間がかかる魚は、こういった世帯からは敬遠される気もします。
何とかこうした世帯でも新鮮でおいしい魚を食べてもらえたらと思うのですが、例えば、市場で値段がつかないような雑魚は多くが廃棄処分されてしまうため、こうした魚を有効に活用できないでしょうか?
こうした魚でも充分おいしい魚はありますし、獲った魚を有効に活用していく点でも、フードバンクや子供食堂に雑魚を無料で届けるボランティア活動ができないかと考えています。
民間の支援機関に連絡をとって、魚を継続的に届けるシステムができないものかと思うのですが、いいアイデアはありますか?
我々、漁業者にとっても、子供たちや若い親御さんたちに魚を食べてもらうことは魚食の普及にもつながるので、やるべき価値があると思うのですが……。
(宮城県・岩渕大海さん/仮名・30代)
脇坂真吏
AgriInnovation Design/東神楽大学学長
全国組織へのアプローチやSNSを利用して情報発信してみましょう
普段関わることがない団体や業界と接点をつくるのは難しいのですが、子ども食堂やフードバンクについては、素晴らしいお考えですね!
私も2020年春から、新型コロナの事業支援の一部を活用して、「子ども食堂プロジェクト」を実施しています。私の場合は、飲食店に対する支援でもあるので、飲食店にひとり親世帯の親子を招待するという形をとっています。
その経験から、アドバイスをさせていただきますね。「こども食堂支援センター・むすびえ」や「こども食堂ネットワーク事務局」のような全国にまたがるネットワークがあります。食材供給ができるのかはわかりませんが、まずはアプローチしてみるのもありでしょう。
もし、地元で行いたいということでしたら、FacebookやTwitterなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)を活用するのも良いと思います。「地元の子ども食堂に寄付したい!」などと投稿したら、「そうした団体を知っているよ!」というような情報を貰えるかもしれません。積極的に情報発信をされていくのもありかと思います。
あと、地域にもよりますが、行政(福祉課、こども課、子育て支援課など)が支援している場合もありますので、問合せしてみるのも手だと思います。実現に向けてぜひ頑張ってくださいね。
長崎一生
さかなの会代表
まずは近くの団体に問い合わせを。工夫して納品すると喜んでもらえます
まず、前提としてフードバンクや子ども食堂への魚の提供に関しては、それぞれでルールや状況が違うため、お近くや縁のある団体にお問合せください。インターネットで「フードバンク 地域名」などで検索をすると情報が出てくるかと思います。
もし、直接アプローチするべき団体が分からない場合は、各地域の社会福祉協議会にお問合せをするといいかと思います。
多くのフードバンクや子ども食堂では、まず、申込みをし、納品する日を決めて、決められた納品場所に納品をする流れでの提供となります。しかし、鮮魚の納品は扱いが難しい、保管ができない、などの理由で懸念されることが多いのも事実です。
その一方で、食育上の観点からも「魚を子どもたちに食べさせたい」と思っている関係者も多くいます。そのような状況の中、納品する魚に工夫をしてあげると大変喜ばれます。
工夫する方法のひとつは、調理しやすいように加工をしてあげることです。すぐ食べられる加工品はもちろん、頭と内蔵を出して凍結するだけでも扱う側はだいぶハードルが下がります。
自分たちで行うのが難しい場合は、加工ができる事業者(加工会社や漁協等)の協力を得るのも手です。フードバンクなどに収めている事業者もいるかと思います。
もう1つの方法は、生魚と一緒に人を派遣して、お魚学習会を開催する形で提供する方法です。特に、子ども食堂の場合はイベントのように行っている場合もあり、そういった場に出向いて、魚を解説しつつ調理まで行ってあげると子どもたちの勉強にもなります。
自分たちで出向くことが難しい場合には、食育の活動をしている「おさかなマイスター」などの個人や団体と組んで行うことも手です。
以上のように、フードバンクや子ども食堂での魚の提供は、「やりたいけど、扱いが難しい」と思っている関係者が多いので、「扱いが難しい」の部分をクリアする方法も一緒に提供してあげると大変喜ばれます。
ぜひ、まずは、お近くの関係団体にお問合せをするところからはじめてみて下さい。