漁業協同組合の女性部に属しています。
毎年、地元の小学校では、3年生が地元の産業について学ぶため、5年生が社会科で日本の水産業の現状について学ぶために、漁港や加工工場を見学しにやってきます。
女性部では日頃から魚食普及の活動を行っていますが、こうした地域の学習や社会科学習と同じように、魚食の魅力を伝える時間を学校で確保してもらえないものかと思っています。
最近では、学校給食をつくっている栄養士さんが食育の授業を受け持つようになったと聞くので、うまく連携できないものでしょうか。
どのように学校にアプローチしたら良いのか、アドバイスをいただけると嬉しいです。
(静岡県・望月めぐみさん/仮名・50代)
関いずみ
東海大学 海洋学部海洋文明学科 教授
学校とつながる漁業関係者に相談を!活動を学校に広げたいと周囲にアピールしておくことも大事
学校現場で魚食の魅力を子供たちに伝える時間を確保できないかというご質問ですが、漁協女性部さんが、地域の学校で魚食普及活動を実践されている例は、全国にたくさん見られます。
代表的な活動としては、魚料理や魚のさばき方教室などがあります。また、地元の漁師さんたちが講師となって、子供たちに漁業の魅力を伝える水産教室といった出前授業を行っているような事例も多くあります。
質問者さんのところでは、漁協として学校に対しての活動はされていないでしょうか。
もし漁師さんたちによる水産教室のような実績があるとするなら、漁協さんが学校とつながっているかもしれません。まずは漁協さんに相談してみてはいかがでしょう。
学校の方から漁協さんに出前授業を要請するケースもあるようなので、そういう情報を漁協さんから女性部さんのほうに流してもらうようにすることも大事だと思います。
漁協さんだけでなく、市町村役場や県の水産普及指導員さんに相談してみるのもひとつの手ではないでしょうか。また、都道府県漁連の女性部担当職員さんも頼りになります。
漁協の関係者や女性部の部員さん自身が、学校でPTA活動をされているというようなことがあれば、そこから学校と直接話ができるかもしれません。
以上挙げたなかで、一番相談しやすいところから話をしていくというのでもよいと思います。なかには後ろ向きの反応をする人たちもいるかもしれませんが、相談相手はたくさんいますので、すぐにあきらめないでください。
質問者さんは既に魚食普及の活動実績をお持ちのようなので、女性部さんとして、あるいは有志でも良いでしょうが、今後は活動対象を広げて、学校や地域住民の方々に向けても魚の魅力を伝える活動をもっと積極的にやっていこうと考えているということを、機会あるごとに周囲にしっかりと伝えることも大切です。
現場を知り尽くした皆さんが、子供たちと直接交流することから生まれるものは計り知れないと思います。ぜひ頑張って活動を広げていってください。応援しています。
次に、学校栄養職員や栄養教諭さんとの連携のアイディアですが、次のようなプログラムが考えられます。
ひとつめは、水産物を丸ごと食べつくす調理法や保存の知恵や技術を学ぶ加工品づくりといった実習活動と、魚の部位や種類、旬、調理法などによる栄養価の違いを学ぶといった講義を組み合わせ、賢くおいしく水産物を食べることを学ぶというものです。
ふたつめは、水産物を使った地域の伝統食、たとえば地元で昔から食べられてきた魚料理や祭りの時に欠かせない料理、あるいは漁業者さんが船上で食べている魚料理などについて、その料理が生まれ、受け継がれてきた背景(歴史、環境、文化など)とともに学ぶというものです。
そのほか、地元の水産物を学校給食のメニューに加えることも考えられます。実際に給食で食べる水産物について、どのような生態なのか、またどのような過程(生産や流通)を経て自分たちの口に入るのかといったことを出前授業できれば、いっそう水産物への理解が深くなると思います。
水産物の調理法などについて、まずは栄養士さんを対象にお魚教室を開催することも必要かもしれません。
竹村久生
食育ボランティア
まずは何をどのように伝えたいか、どのような方法で伝えたいかを明確に!
学校にアプローチするにあたっては、まずは何をどのように伝えたいか、またどのような方法で伝えたらよいのかを明確にすることが必要です。
私の場合は、食育を通じて、身近な容器栽培で野菜を育て、野菜を育てる楽しさを味わい、野菜には命があるという体験をして、収穫したものに感謝しながら調理して食べることの大切さを伝えたいと思っています。
伝える方法としては、身近な生活空間で野菜を育てるための栽培システムを実技講習で伝え、その日から栽培をはじめさせます。
講座の中では、野菜づくりや食育に興味を持ってもらえるような映像や音楽を使いながら、栽培したい野菜をまず食べることからはじめ、食べる楽しさを伝えるとともに、食べるために野菜を育てるということを講座で実体験させます。
以上のように直接児童生徒に対して講座を行ったりするほか、指導者に対しても、講義したプログラムをそのまま地域や職場に持ち帰って教えられるように講座を行ったりしています。
実際に私が学校栄養職員、栄養教諭や給食主任を対象に、また行政栄養士会に向けて行った講座や研修会を5つほどご紹介します。
どのような方々に向けて、どのようなテーマで、どのように講座をすすめたのかがわかると思いますので、参考にしてみてください。
「第1回静岡県行政栄養士会研修会 お部屋deとれたてマイ畑」
参加者:静岡県行政栄養士会40名
「より興味の持てる食育の授業を行うためには ~栽培活動を取り入れた食育の手立てについて~」
参加者:県北域内栄養士部会会員40名
「お部屋deとれたて、マイ畑 牛乳パック・ペットボトル栽培」
参加者:健康づくり食生活推進委員20名
「次世代を担う子どもたちを育む食育 ~種(苗)から自分の力で野菜を育てて、調理して食べる食体験を~」
参加者:給食主任、栄養教諭100名
「簡易な栽培体験 ~お部屋deとれたて マイ畑~」
参加者:栄養教諭・教諭・栄養士・とうかい食育ネットワーク会員33名
以上の例からもわかると思いますが、自分の特技や特徴を活かした講習内容でないと開催していただけないと思います。
また、内容に関しては数多く行うことで、次第に改善されていき、口コミで広がっていくと思います。
ご質問は、魚を通しての食育や魚を食べることの大切さを伝えるような講座をどう行うのかという内容だと思います。私が毎年、三島市健康センターをイベント会場として、子どもや親子を対象に行っている魚料理講座(マックスバリュ東海主催)があります。
この講座では、4月に「お魚を大好きになろう」をテーマに、魚を解体して部位の説明や調理方法、栄養について子どもたちにやさしく解説しました。講義を上手に行っていくためには、魚に関する専門的な知識を持っているだけでなく、子供の興味を引くようなわかりやすい伝え方を習得することが第一歩だと思います。
学校へのアプローチの仕方については、いろいろな方法があると思いますが、まずは漁業の現場に見学に来てくれる学校栄養職員や栄養教諭さんたちと直接話をするのがよいと思います。
学校栄養職員や栄養教諭は自校の各クラスで栄養や食育に関する授業を行うことになっているため、内容や目的が合えば直接児童・生徒に対して講座ができると思います。
また、学校栄養職員や栄養教諭に対しては、栄養や食育に関する研修会が毎年行われますが、その場で魚に関する講義を行えば、学校に呼ばれて研修会を行うことができると思われます。これに関しては教育委員会や行政に問い合わせてみてください。