底引き漁をしながら、地域の名産品である干しがれいも生産しています。
店舗販売や道の駅への出荷・通販が主ですが、以前に比べ干しがれいの売り上げが4割以上減っております。
ただ、ノドグロが脚光を浴びたおかげで、ノドグロ・アジを始めとする他の干し魚が売れており、経営面ではカバーできています。
干しがれいは先代から扱ってきた愛着のある商品ですので、なんとか売れるようにしたいと思っていますが、なにか食べやすくする加工方法や、干しがれいの新しい形の売り方を提案できればと考えています。
ちなみに、店舗に来たお客さんや道の駅の店長さんに聞くと、カレイの干したものは小骨が多く、食べにくいし、食べられる部分も少ない、また匂いも独特なので、そこが敬遠されているそうだということも聞きます。
私自身は干しがれいを食べ慣れているため、食べられる場所やコツを理解していますが、一般のお客さんにとっては「食べにくい」ということが敬遠される原因になっていることが感じられますので、この点を何とかできないかと思います。
ぜひ、干し魚を食べやすくする方法や、新しい売り方・お客さんへの提案など、アイデアをもらえるとうれしいです。
(島根県・木村さん/仮名・60代)
麓 貴光
株式会社水土舎 代表取締役
干すだけでなく、産業技術研究機関など連携、高度加工することで販路を開拓しては
愛媛県にある株式会社キシモトが、「骨まで食べられる干物」を開発した事例を紹介します。
昭和46年に干物製造・販売する会社として創業した株式会社キシモトですが、1990年代に入ると食の欧米化が顕著になり、魚離れが徐々に叫ばれるようになってきました。
そうした中、骨を取り除いた干物を開発する等の新商品の開発を続けていましたが、苦難の時期が続いたそうです。
そんなある時、愛媛県産業技術研究所から、高齢者向けに「骨まで食べられる干物」の共同開発の申し出がありました。
背景としては、高齢者施設でのアンケート結果の中で、高齢者からは「魚が食べたい!」という声が多かったからでした。
高齢者施設では刺身等は食中毒のリスクがあること、焼き魚は骨を除く手間があるなど、魚全体が施設として扱いつらい食材で、敬遠されてきました。
そこで、産業技術研究所は缶詰加工に使用する高温高圧処理技術を転用し、骨まで食べられる干物を発案しました。
ポイントは、技術の実用化に積極的に取り組んだ岸本専務の存在です。かねてより干物の研究に熱心だった株式会社キシモトの岸本専務にその旨を打診したところ、岸本専務は産業技術研究所に年間200日以上通い、研究を重ねたそうです。
結果として、電子レンジや湯せんで加熱するだけで、骨まで食べられる干物が完成しました。
骨まで食べられることでカルシウム摂取量は、従来の20倍であることも判明し、健康面でもアピールができます。当初のターゲットの高齢者のみならず、妊婦や子供、今では学校給食にも活用されています。
他にも、水産庁が推進している「ファストフィッシュ(加熱だけやそのままで食べられるよう、加工処理した魚を水産庁が認定)」等の取り組みがあり、手軽に食べられるような工夫をした商品開発が広く行われています。
そうしたファストフィッシュの開発に関する取り組みをしている加工業者と連携するのも一手です。