四国でブリやタイの養殖をしている漁師です。
養殖魚のエサにかんきつ類などのフルーツを加え育てる「フルーツ魚」に取り組んでおり、おいしい魚を多くの人に食べていただきたと思っています。
先日、テレビで「ヒラメやホシガレイの養殖に緑色のLEDライトの照明を使っている」というニュースを見ました。
この方法で飼育したところ、養殖魚の身幅が大きくなり、さらに出荷までの期間を数カ月も短縮する効果があったとのこと。
それだけでなく、年間で数百万円ものコスト削減が期待できるとのことでした。
照明と魚の成長の関係、そもそも緑色なのはなぜ?など知りたいことだらけです。
また、ヒラメやホシガレイ以外の魚の養殖への効果は期待できますか?
(四国地方・高橋陽介さん/仮名・52歳)
高橋明義
北里大学 副学長
生息域の光に似ている影響が考えられます。メリットが多く、これから伸びていく技術です
緑の光で養殖するようになったのは、カレイを養殖すると裏側が一部黒くなり見栄えが悪いから、白くする方法はないかとはじめた実験がきっかけです。
壁の色を白く明るくすることから検証し、明るい水槽だと成長が早いことがわかりました。次に、白・青・赤・緑のライトの中では、緑色のLEDに最大の効果があることがわかったのですが、要因はまだわかりません。
可能性としては、自然界ではヒラメやカレイの生息域に届くのが緑色の光であるため、生息域に近い環境が再現されていることや、緑色の光がホルモンや神経に作用することなどが考えられます。
緑色LEDを当てることで魚の重さは平均1.6倍に、出荷までの時間は1年から9か月に短縮され、ある試算では人件費や燃料費が約13%(年間300万円ほど)コストダウンし、餌代も5%~10%節約できます。
LEDライトの設置代は数十万円らしいですがLEDのため電気代は安く、生育期間が短くなるのでポンプなどの電気代なども節約できます。味や見た目も普通の養殖魚に劣らず、目立ったデメリットはありません。
現在、緑色LEDを大分県と山口県で取り入れており、大分県ではとくに力を入れています。
ライトの点灯時間は12時間の例がありますが、決まった照射時間はなく、作業や魚を休ませてあげることを考えて、点灯時間を決めています。
ヒラメやカレイの養殖場は暗いので、水槽の脇や天井にある光源を緑にする方法が考えられます。光の強さは光量子速密度でいうと1秒間1平方メートルに10マイクロモル(直に光を見ると明るいけど、暗室で照らすと薄暗いと感じる程度の明るさ)です。
大分県では水槽の水面にまんべんなく光が当たるほどの明るさで行っています。灯具の数や、明るさ暗さは現場の実情に合わせて加減することができるでしょう。
効果の実証はできていますが、確たる要因までわかっていないのが現状です。そのため、これからいろいろな魚種で検証する必要があります。
まだ未知数なことはありますが、ヒラメやカレイ以外の魚でも効果がでる可能性はあるので、導入するかどうかは漁師さんのやる気次第ですね!