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平坦地と傾斜地が混在する農地。梅の栽培には平地に造成するかモノレールを整備するかどちらがいい?

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平坦地と傾斜地が混在する農地。梅の栽培には平地に造成するかモノレールを整備するかどちらがいい?

群馬県内の40代です。県の特産として知られる梅を栽培しています。収穫量を増やして収入増につなげようと2ヘクタールの土地を新たに購入しましたが、南に面していて日当たりはいいものの、平坦地と傾斜地が混在しているため、そのままでは農作業を行うのに大きな労力が必要になってしまいそうです。

かん水、病害虫の防除、収穫時の運搬といった農作業をできるかぎり減らすには、平坦地の造成と園内作業道の整備を行うのがいいか、モノレールを整備するのがいいかで迷っています。

土地の特徴は、
・麓付近が3割程度、平坦地になっている
・土地の中央付近には、平坦地から傾斜地の上のほうに向かって幅4メートルの市道が縦断している
・傾斜地の傾斜は15度~25度程度
です。

経費(初期費用、メンテナンス費用)と日々の作業効率の両面からアドバイスをいただけますでしょうか
(群馬県・田中さん/仮名・40代)

田中克樹

農と風土の学び舎

傾斜地にはモノレールとあわせて作業道を作ると効率UP

相談者さんが整地したいと考えているという2ヘクタールの土地は、南向きで日当たりがよいとのことなので、傾斜地と平坦地を一体的に造成するのがよいでしょう。

そのうえで、傾斜地がもともと梅園だった場所であれば、大木の梅の木が密に植わっていて作業性が悪いことが予想されます。また平坦地には、新規に梅の木を植えることになると思われます。

傾斜地は1.4ヘクタール程度と面積も広そうなので、作業道を作って作業性を高めるのがよいと思われます。しかし傾斜の度合いが15度~25度と一定していないため、広い作業道をつくるのとモノレールを設置するのと、どちらがよいと一概に言えません。

そのため、両方のポイントについて解説したいと思います。まず、基本的に斜面地の作業道は、等高線に沿ってS字状に回行するようにつくるのが望ましいとされています。

その理由として、傾斜地は雨水が園地内に流れ込むと土砂が流れやすいことが挙げられます。そのため、雨水が緩やかに作業道を流れるように工夫しましょう。その際、できれば作業道の山側を5度くらい低くして路面に傾斜をつけ、作業道に沿って水が麓(低い)方へ流れるようにします。

特に、道がカーブしているところは注意が必要で、カーブの外側にコンクリートかモルタル(セメントと砂を水で練ったもの)で縁盛りするか、レンガやブロック、土のうなどを置いて水が作業道から溢れ出ないようにします。

さらに、このカーブの部分は、道幅を広めに取っておくと、安全性を確保できるとともに作業性も向上します。従って、カーブしている道の周辺の木は大胆に伐っておくことをおすすめします(根はユンボーで抜根するとよいでしょう)。

また、伐木することで日がよく当たるようになるので、その周辺に植えられた梅の木の実はかえって品質がよくなることが期待できます。

作業道の造成後に法面や作業道の基礎部分の土壌の流出を防ぐには、リュウノヒゲやナギナタガヤなどを植え付けたり、安価で手に入る廃材(石材やテストピース、古タイヤなど)を土のうとして利用したりして土留めすれば、コストを抑えることができます。

また、法面の上端に畦波シートや波幅の大きいプラスチック製波板を埋め込むことでも、土壌の流出や法面の侵食、崩壊を防ぐことができます。

上段と下段の作業道の間の園地は、2列植えにしてもよいですが、1列植えの方がスピードスプレーヤーでの農薬散布がやりやすくなるうえ、日当たりや風通しもよくなるため、梅の実の品質アップにもつながるはずです。

伐木すると植え付け本数が少なくなるので、最初の数年は収穫量が減りますが、年を追うごとに収穫量も増えていきます。なお、園地全体を造成した場合は、造成後に地力を維持するため牧草や雑草などを生えて地表面を被覆保護する「草生栽培」を行い、土壌を落ち着かせる必要があるでしょう。

一方、モノレールを設置する場合には業者に頼むことになると思います。設置の形態としては、作業道を整備する際と同じように等高線に沿ってS字状に軌条を配置する回行方式と、傾斜に沿って上下の縦方向に設置する方式があります。

当然、縦方式にすると設置する軌条の距離が短くなるため、設置経費は少なくて済みますが、作業効率は悪くなります。そこで、等高線に沿った道幅50cm程度の作業道をつくって縦方向のモノレールにつなげるとよいでしょう。

この程度の作業道であれば、5馬力クラスの歩行型管理機(小型トラクターなど)でも作ることができます。その場合、逆回転する片排土ロータリ(片側に耕うん爪がついたもの)で山側の土だけを削り、削り取った土を前方にかき出すとともに谷側へ飛ばして斜面に道をつけていきます。

斜面に道があると足場がしっかりするので、薬剤散布のノズルや刈払機がラクに使えるようになり、作業効率が向上します。また収穫した梅や肥料などもこの作業道を使って一輪車で行えるので楽です。

回遊式のモノレールを設置するなら「農研機構」が研究開発した「傾斜地果樹用多目的モノレール」という新たな作業システムがあります。これは収穫だけでなく、病害虫の防除など多目的に使える優れたシステムです。

設置後の整備費はかかりますが「農研機構」には今回の質問のような新規システムの導入を資金的に援助する制度もありますので、検討する価値はあります。

また、土地を造成する場合、費用については造園会社に、モノレール設置については農機の販売業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。

なお、相談者が居住する群馬県には「荒廃農地再生利用・集積化促進対策事業」があり、補助金が出る可能性がありますので、市町村の農政担当窓口にも相談してみてください。そのほか、農業振興公社などに相談してみるのもいかがでしょうか。

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