農家に嫁いで10年になります。
育児にも少し余裕が出てきたタイミングで、少しずつ畑の手伝いをするようになりました。
最初は補助的な作業ばかりでしたが、仕事を任されるようになると、おもしろさに魅了されてどんどんのめり込んでいくのが自分でもわかります。
体力的には辛いですけど、それにも勝る充実感です。
最近は、技術的な勉強をもっとしたいという欲が出てきました。
栽培に関する基礎知識や農機具の操作方法、デジタルを活かした最新情報まで勉強したいです。
分からないことは家族にも聞くのですが、家族が知っている情報が古くなっているという事情もあり、そのまま信用していいのか?と疑問に思うこともあります。
私のような、新米の農家や女性農業者向けに特化した勉強の方法はありませんか?
WebサイトやSNS、交流会や勉強会などなんでも構いません。
(石川県・山口さん/仮名・40代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
セミナーや大学の社会人講座に参加してみてはいかがでしょうか
サポート役に徹する女性が多いなかで、主体的に仕事をされていて、素晴らしいと思います。
いまや、就農や農業の技術・経営指導に関する支援事業などは、農林水産省の事業(「女性グループへの研修支援」「女性リーダー育成支援」「女性の活躍推進支援」や自治体などでも数多く展開されていますから、まずは行政(農業改良普及員など)にセミナーなどはないかご相談されてはいかがでしょうか。
私のおすすめは、近隣の農業関係の学部・学科を有する大学に相談するのも、ひとつかなと思います。
私が所属する東京農業大学生物産業学部では、商品開発や事業化の支援を目的とした社会人講座を実施しました。
一番この講座に反応されたのは、女性農家さんでした。
地域で加工品開発などを担ってきた女性農家にとって、専門的な知識や技術が学べることが魅力だったようです。
さらに、農業経営に関する知識に加え、高度な組織経営、経営戦略の講座も実施しました。
すると最初はものづくりが目的であった女性が、経営視点の重要性を実感し、自らの農業経営も見直すようになりました。
経営者としての自立の意識が芽生えたのです。
本学のセミナーに参加された女性農家は、商品開発に留まらずカフェや直売所、民泊といった事業化まで展開していきました。
今では地域のあらゆる会議や委員会において、本セミナーの修了生が招聘され、地域活性化の重要なキーパーソンとなっています。
なお、女性が経営能力を身につけることで、家庭や地域も変わります。
当初は講座の参加に否定的だった旦那様が、何事かと身構えるようになったそうです。
また、精力的に活動する奥様に影響され、とても協力的になられたとのこと。
女性が経営者に進化することで、家庭=「家族経営における農業(多角経営化)」が変わり、女性の立場も変わったのです。
こうした女性が増えれば、地域も変わっていきます。
なお、本学講座の参加者は多種多様でしたので、交流も価値観を変える大きなきっかけになったのではないかと思います。
学習は楽しいですし、今以上に充実した農業の世界が広がると思います。