親戚の農家が、ハンマーモアで狭い農道の草刈りをしていた時に、機械とともに土手から転落し、左大腿部を骨折してしまいました。
リハビリし、杖なしでも歩けるくらいまでは回復しましたが、事故の後遺症でアクセルやブレーキの踏み込みが難しくなり、車の運転ができなくなってしまいました。
労災保険には加入していなかったのですが、JA共済から手術や入院の費用は工面できました。しかし、生産規模は縮小しなければならず、収入が減ると心配しております。
収入が減る分をどう補ったらいいのか、親戚で集まって話し合っているのですが、そんな折に知人から「障害者手帳がなくても障害年金を受給できるらしい」という話を聞きました。
こうした農作業事故による後遺症の場合、どんな条件であれば障害年金を受けられるのでしょうか?
(岐阜県・野中和史さん/仮名・60代)
中村雅和
いのしし社会保険労務士事務所所長/農業労災事務センター常務理事/社会保険労務士
2級障害に該当するかどうか、最寄りの年金事務所へ相談をおすすめします
親戚の農家さんが国民年金に加入していて、保険料の未納がない、という前提でお話しいたします。
国民年金には「障害基礎年金」という制度があり、障害等級2級まで年金が支給されます。
下半身の障害で2級障害に該当するには、
▼一下肢の機能に著しい障害を有するもの、
▼体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの、
▼身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態…であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」などの記載があります。
これをわかりやすくいうと「障害により日常生活に著しい制限を受ける」という程度が2級にあたります。(ちなみに1級は日常生活の全てに介護を必要とするような状態とされています。)
ご相談のケースでは、「歩行はできるが運転ができない」ということですので、2級に該当するかどうかというと微妙なところだと思います。
実際に2級に該当するかどうかは、審査を受けてみなければわかりませんので、まずは、お近くの年金事務所で障がいの程度をお話しして、受給可能かどうかを判断してみていただくことをおすすめいたします。
なお、労災保険には特別加入という仕組みがあり、自営農業者でも加入できる場合があります。
もし加入されていれば、労災保険の障害補償給付は14級までありますので、何らかの補償が受けられた可能性はあるかと思います。
今からでも遅くはありませんので、ご自身や身近な方に労災保険加入をおすすめしてみてください。