東京都で野菜農家をやっている50代です。
先日、地域の異業種交流会に参加したところ、民間の会社(地元の障害者関連施設を運営している社会福祉法人)から障害者雇用で協力してほしいと相談されました。
東日本大震災以降、福祉や社会貢献、ボランティアに興味を持つようになりましたので、何らかの形でお手伝いしたいと考えています。
しかし、いままで障害者の方と接する機会がほとんどありませんでした。
障害には身体や知的などの種類が違いや、障害程度の分類などがあることも初めて知ったような状況です。なによりも意思の疎通の不安もあります。
こちらの安易な気持ちで、障害者の方を傷つける可能性もあります。不測のトラブルもあるでしょう。
そんなことを考えているうちに、だんだんと不安ばかりが膨らんできました。
障害者雇用するにあたっての押さえておくべきことを教えてください。
(東京都・大岡明夫さん/仮名・50代)
A.B.先生
農業経済学が専門の大学の名誉教授
障害者雇用の促進はメリットだらけ。ぜひ取り入れてください
障害者雇用は双方にメリットがあります。ぜひ前向きに検討ください。まずやってもらいたいことは社会福祉法人とよく話し合うことです。
障害者にもいろいろなタイプがあり、例えば集中してできる作業と難しい作業があります。農業者側はどの作業をやってもらいたいのかを考えてみてください。
双方の希望や目的がマッチしないと、うまくいきません。不安な部分などもたくさんあるはずです。どんな些細なことでも相手に相談してください。
よく打ち合わせすることで、たいていの問題は事前に避けることができます。障害者との意思の疎通の不安もあるでしょうが、指導者が付き添いますので大丈夫です。
押さえておきたいポイントは、障害者は熱心で作業スピードも高いことがありますが、作業種類は限定的になってしまうことです。
そうなると障害者の作業と関係する作業や周辺作業との配慮が大事になってきます。とくに健常者との組み合わせをしっかり考える必要があります。
作業の指示は、できるだけ具体的に示すことが必要です。「キレイに」「よく洗って」などのように、受け取る人によって解釈が異なる表現は避けます。「●回」「●秒」など具体的に示してください。
障害者は自分で判断を要する作業が苦手な場合が多いので、できるだけ作業工程は複雑にせず、使う道具や手順を具体的に提示する工夫が必要です。
こういったノウハウを社会福祉法人は持っています。助成金などにも詳しいです。どんどん質問をぶつけていった方がいいでしょう。
また、全国の自治体では「ユニバーサル農業(誰でも参加できる農業)」の促進が盛んです。そんな状況の中で、静岡県浜松市でユニバーサル農業を推進している京丸園株式会社は、100名の従業員のうち約25%が障害者で、年齢層も18歳から82歳までと幅広いことで非常に注目されています。
障害者のできる作業を受け入れ側が考えていくことで生まれた変化を知ることができます。非常に刺激になることでしょう。