愛知県で父の農地を引き継いで農業をやっています。引き継いだのは30代前半で、10年ほどになります。
育てているのは、ハウスや露地栽培によるメロンやネギ、えんどう豆、キャベツなどが中心です。現在は家族とパートさん5名ほどで切り盛りしている状態です。
いままで経営については父のマネをしているだけでしたが、父から「好きにやってかまわない」と言われるようになりました。
そこで自分らしい農業をやっていきたいと考えているところです。
いま真剣に考えているのが、農業のビジネス化です。最近は昔の農家経営からビジネス的な経営に変える人が増えてきていると感じています。
ビジネス化をしていくには組織をしっかり作ることが必要だと思うので、組織を支えてくれる「人づくり」から始めようと思います。
そこで、パートさんを思い切って社員にしようと考えているのですが、パートさんを社員にした場合、メリットとデメリットを知りたいです。
(愛知県・渡さん/仮名・40代)
山下弘幸
株式会社農テラス代表取締役、農業経営戦略家
経営理念を共有することで、正社員を雇うメリットが大きくなっていきます
まず雇用主にとって大事な問題ですが、パートも正社員もそもそも働き方給与体系が違うだけで同じ社員だという意識を持っていただきたいです。
ですから「パートだから、正社員だから」という思考はやめた方が良いです。
とはいえ、実際は正社員の方が意識が高く、パートは責任が少ないというイメージが強いかもしれませんね。
この感覚は、雇用主だけでなく、雇用される方にも根強くあるようです。ですので、こういった意識を変えることができるのが、正社員を雇うメリットといえるでしょう。
正社員を雇うということは、「経営理念」を強制的に共有して意識を変えてもらうことです。
経営理念とは、会社は何のために仕事をするのか、誰のためにどんな商品サービスを提供するのか、その商品サービスで誰が喜ぶのか、誰を喜ばせるために自分たちはこの会社で働くのかなどを決めたものです。
この経営理念が浸透していくことによって、組織が成長していきます。
コスト面だけを考えると、正社員を抱えることは経営を圧迫します。
基本的には通年雇用の人件費が発生します。パートの流動経費が、固定経費に変わってしまうのです。
農業事業は収入が固定していませんが、売上の変動に関わらず、必ず支払いをしなければなりません。
これが大きなデメリットです。
とはいえ、雇用主と正社員の間で経営理念の共有がしっかりとできれば話は違ってきます。
雇用主と同じように親身になって働いてくれる正社員を増やすことは、仮にその社員に年間300万の給料を払っても500万以上の働きをしてくれる可能性の広がりとなります。
つまり、社員が会社のために働いてもらうように雇用主が指導することで、メリットを大きくしていくことができるわけです。