岐阜で野菜農家をしています。
少量多品種で栽培し、直売所への出荷がメインです。
近頃は、お客さんから「ナスのトゲで痛い思いをした」という声をときどきいただきます。
昔の人は「ヘタが張り、トゲのあるものが新鮮」と知っているでしょうが、若い方にはもう馴染みませんね。我々の認識も古いのかもしれません。
私もスーパーへ行くときは、野菜売り場をじっくり見ます。
どの野菜も見栄え良好ですが、最近のナスはトゲの無い品種がほとんどですね。
私も野菜を扱うプロのひとりでありながら、気付かないことも多いのだなと痛感します。
ナスのトゲは無くなり、野菜の味だって進化していますよね。
調べてみると、スーパーで流通するトゲ無し品種は「とげなし千両二号」や「とげなし美茄子」などのようです。
これらの品種は栽培しやすいのでしょうか?
また、いま人気の品種を教えてください。
(岐阜県・大原弘樹さん/仮名・60代)
相沢栄一
赤毛農園
「とげなし千両二号 」や「とげなしSL紫水」は栽培も平易で食味も良好
当方では、3年前から「とげなし千両二号」をJA経由で市場出荷しています。市場から品種指定があったと聞いていますので、トゲのない品種の方がお客さんに好まれるのだと思います。
こちらで扱う野菜苗で、トゲの有無は特に問題になってはいませんが「とげなし千両二号 」や「とげなしSL紫水」といったトゲなし品種は人気があります。
「とげなし千両二号」は極早生(ごくわせ<早生品種よりもさらに生育期間の短い品種>)で収量が多い品種です。
草勢(株が成長する勢い)は枝の発生が多く、枝伸びも良好。果皮は濃黒紫色でツヤが良くやわらかで、果肉は中程度の緻密さです。
ヘタや茎葉など、全てにトゲがない長卵形です。畝にフィルムをかけるトンネル栽培や、夏秋の露地栽培に向く品種といえるでしょう。
「とげなしSL紫水」はやや長めの丸形の水ナスで、果ぞろいが良く、果色は黒紫色でツヤも良いのが特長です。
茎葉にトゲがなく、果実のヘタにもトゲはほとんど発生しません。食味はやわらかく甘みがあり浅漬けやぬか漬けに向き、食味重視の直売所出荷にはもってこいです。
従来のナスと、トゲなしナスは栽培上の違いはまったくありません。傷果の減少はもちろん、管理作業や袋詰めでの作業性も良く、収穫時に痛い思いをしないのが好評です。
栽培期間中はうね間の通路部分が常に湿っている程度の水分があると、みずみずしいナスが収穫できます。