宮崎県で牛の繁殖農家を営んでいます。私と妻のふたりで営んでいますが、どちらも60代と高齢のため、体力に衰えを感じています。
以前は子牛が暴れても繋いだロープを引っ張って押さえることができていましたが、今では牛の力に負けてしまいます。
特に苦労しているのが、出荷前に子牛を移動させる作業や、トラックへ積むときです。
移動させる際、制御できず子牛にケガさせてしまうことが増えてきました。
牛の背骨が折れたり、足のケガをさせたりと出荷前の事故が増えた事で、通常の値段がつかず赤字になることも多いです。
暴れる牛の動きをうまくおさえる方法や、出荷前の事故を未然に防ぐ方法があればぜひ教えていただきたいです。
(熊本県・田村啓二さん/仮名・60代)
一條俊浩
岩手大学 農学部 共同獣医学科 准教授
牛が大きく育つ前から、人に慣れさせておくことが重要です
牛は臆病な動物であり、好奇心旺盛な動物でもあります。最初に驚かすと手がつけられないほど暴れます。
基本はどの動物であれ、その動物の習性をよく知ることが重要です。
お尋ねの件ですが、まず牛が人に慣れていない、もしくは初めて牛舎から出されるときに同様のことが起こります。
まずは、牛をよく慣れさせることです。
大きくなってからは大変なので、できるだけ小さいうちに人に慣れさせること、あるいは外に連れ出す練習をすることです。
以前読んだ牛飼いの方が書いた本(農文協)に、子牛が生まれてから1週間、子牛に1日30分間話しかけると、親牛と同じくらい、人に慣れると書いてありました。
早速、知り合いの牛飼いの方に実践してもらったところ、人を怖がらなくなったり、親牛も人も区別しなくなったことがありました。また、人工哺乳で育てた子牛は、人によくなつくことからも、できるだけ早いうちに躾けるのが良いでしょう。
おとなしい牛たちは、飼い主によく訓練された(愛情をもって育てられた)牛に間違いないのです。