バラの魅力に取りつかれ、バラ農園の経営を始めて5年になります。
今後も自分の視点を活かして、いろいろな角度からバラの魅力を伝えていきたいという夢を持っています。
現在はハウス栽培で「パパメイアン」「アライブ」「ロートレック」など10種類ほどを育てています。
食用バラは見た目の美しさと糖度の高さがポイントなので、できるだけ美しく甘いものを育てていきたいです。
いまのところパパメイアンやアライブの糖度は7から8くらいです。
しかし、赤系のバラはポリフェノールのせいで、どうしても苦味が残ってしまいます。
苦味も食用バラの魅力だとは思いますが、もっと糖度を上げて、できれば糖度10くらいまでにしたいと考えています。
もしくは糖度を上げるのではなく、逆転の発想で苦味を和らげる方向でもいいのですが、どうしていいのかわかりません。
(埼玉県・中村さん/仮名・30代)
木村龍典
dot science株式会社 エディブルガーデン担当
光のコントロールにより糖度を上げたり苦味成分を抑えることが可能です
相談者さまも気づかれているようにふたつのアプローチがあります。
「糖度を上げること」と「ポリフェノールなどの苦味成分を抑えること」です。それぞれの方法についてご説明いたします。
糖度を上げる方法ですが、これは栽培面と保管面の両面からのアプローチが可能です。
まず栽培面では灌水量を減らすことが重要です。
それによって植物内の糖の合成を促し、さらにカリウムやナトリウム、プロリンなどの水ポテンシャルに関わるミネラル、アミノ酸などの増加も期待できます。
また栽培光で赤色を選択的に照射することで糖の合成を促すことができます。
LEDなどの補助光源などを使って赤色光を照射するわけです。
最近では高糖度トマト生産で夜間補光や曇天日のLED補光が積極的に取り入れられています。
つづいて保管面についての注意点です。
密閉で冷蔵条件下(3〜7℃程度)にて3、4日程度保管をすると、花びらのグルコースなどの糖量が増加し、糖度が上がることが弊社の調査により明らかになっております。
これは植物自体が花びらが枯れないように水を外に出さないようにするからだと考えられます。
肉でいうところの熟成によってグルタミン酸などの旨味成分が増えるイメージと同じようなものだとお考えいただければと存じます。
今度は逆転の発想で、苦味成分を抑える方法です。
苦味成分の代表であるポリフェノールは、太陽光に含まれる紫外線(UV光)により顕著に合成が促されます。
地上に到達する紫外線はA波(UV-A)とB波(UV-B)の2種類ありますが、とくに皮膚ガンやシミの原因になることで知られる短波長のB波が大きく影響しています。
したがって、UVカットのハウスビニール素材を使用したり、平織で織り込まれた被覆資材「寒冷紗(かんれいしゃ)」によって照射される太陽光量を少なくする方法で対処するといいでしょう。