新規就農して2年目になります。農業アカデミーを卒業した後、希望に近い農地を借りることができ、現在は手探りで農業を行っています。
農業を選んだのは、サラリーマンとして働くよりも、できるだけ自立できる仕事をしたいと考えたからです。また、結婚したばかりの妻がアトピーで苦しんでいるので、自分が作った新鮮で安全なものを食べさせてやりたいという想いもありました。
昨年はキュウリ、トマト、なす、トウモロコシ、小松菜、春菊、ホウレン草などの葉物野菜を中心に育てましたが、今年はじゃがいもなどの根菜類を育ててみようと考えています。
しかし、土の中で育つ野菜は病気の判断がつきにくいので、どうすればいいかと悩んでいます。妻のこともあるので、できるだけ農薬は使いたくありません。
そこで、春作と秋作のじゃがいもの中で、病害虫に強いおすすめの品種を教えて欲しいです。
(神奈川県・橋本さん/仮名・20代)
鈴木雅智
ブロ雅農園
ジャガイモの病害虫発生は、品種よりも水はけ、肥料、土壌に注意してください
我が家もご相談者様と同じく農薬に頼らない栽培方法を目指しています。しかし、どんな野菜でもそれが可能というわけにはいきません。
農薬を使用しなくても栽培しやすい野菜と、農薬を使用しないと栽培レベルがグッと上がる野菜があります。
私の経験ではジャガイモは、農薬を使用しなくても栽培しやすい野菜です。実際、わが家では父の代から30年近くジャガイモを栽培していますが、1度も農薬は使用していません。
土のバランスや微生物のバランスが良い畑なら栽培は可能です。
病害虫に強い品種ということですが、農薬を使用しない場合、品種によってそこまで大きな差はないように感じています。
我が家が選んだ品種は「キタアカリ」「アンデスレッド」「ノーザンルビー」「デストロイヤー」「シャドークイーン」です。
栽培期間中農薬不使用で栽培し販売する場合、ある程度は高価に販売したいと思いますが、定番の品種、通常の販売方法だと価格でどうしても勝てません。
そこで『カラフルジャガイモ』という形で販売することによって付加価値が生まれ、さらに「栽培期間中農薬不使用」という付加価値も加わるので、価格を上げることが可能です。
また、春と秋のジャガイモですが、春ジャガの方が収量が増え作りやすいです。三浦半島では秋ジャガは栽培量が少ないため収量こそ減りますが、他の方が出荷しない時期に出せるのが魅力的となっています。
この地域では大正時代の初期から行われている「オンバイモ」というやり方があります。
種芋を購入するだけでなく、販売できずに売れ残ったジャガイモの芽を出して、再び植え付ける方法です。
成長のスピードも違うことから、生育ステージのリスク分散という考えからも、購入した種芋とオンバイモの組み合わせがおすすめです。
また、ブロ雅農園では春と秋で品種を分けていません。ジャガイモ専門でやるわけでないなら、そこまで気にしなくても大丈夫だと思います。
販売先によっては「メークイン」や「男爵」などの定番品種を指定されて、栽培を望まれる場合もあります。これらの定番品種でも同じような方法で栽培可能です。
しかし流行りの「インカ」シリーズなどは株が弱く、収量も少ないため、ハードルはかなり上がります。自分で食べてみたい場合や高価格をつけることができる場合以外は手を出さない方がいいかもしれません。
病害虫の発生については、ジャガイモの場合は品種より水はけの問題と過剰な肥料がポイントとなります。
あとは土壌のpHに気を付けてください。石灰のあげすぎでアルカリ性が高いと「そうか病」になります。
ただ、そうか病になってもジャガイモの肌が汚れるだけで食べるのは問題ありません。栽培中での農薬不使用にご理解があり、多少見た目が悪くても理解して購入してくれる消費者さんとマッチングできると収入も安定します。