埼玉県で就農して5年ほどになります。露地栽培で野菜を作っていますが、まだまだわからないことばかりです。
育てている種類は大根、里芋、ねぎ、じゃがいもなど、さほど多くありません。
主力はじゃがいもで年に2回、春植えと秋植えで育てています。
一昨年あたりからじゃがいもの表面に褐色の丸いブツブツができるようになりました。調べてみると「そうか病」のようでした。
そこで土のpH値を土壌酸度計で調べてみるとアルカリ性が強かったので、土壌改良もしてみました。
しかし、あまり効果がありませんし、むしろだんだんと増えてきています。見た目が悪いく商品にならないので、深刻な問題になってきました。
何人かの先輩に相談してみると、ひと目見て「そうか病だよ」と指摘する人もいますし、そうか病でじゃなく、「粉状そうか病かもしれないね」と言う人もいました。
実際、褐色の丸い斑点が小さい感じなので、もしかして粉状そうか病なのかもしれません。
そうか病と粉状そうか病では対策方法も異なるようで、いままでの土壌改良も間違っていた可能性があります。
しかし、私が見る限り、そうか病と粉状そうか病の大きな違いがわかりません。どうやって見極めたらいいのか混乱しています。正しく見分ける方法を詳しく教えてください。
(埼玉県・風間さん/仮名・30代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
じゃがいものそうか病、粉状そうか病は見た目は似ている病気ですが、土壌の違いによって見極めることが可能です
じゃがいもそうか病、粉状そうか病のどちらも、イモの表面にコルク状の「かさぶた」のようなものができます。
かさぶたは、そうか病の方が細かく、粉状そうか病の方がやや大きく褐色がかった色をしています。
とはいえ、この違いは主観的な判断によるものですので、やはり判断はつきにくいといえます。
両者の大きな違いは、病気が発生する土壌の状況が異なる部分です。これは悪さをする病原菌がまったく異なるからです。
そうか病はストレプトマイセスという糸状性の細菌が原因菌なのに対し、粉状そうか病はスポンゴスポラというネコブカビ科に属した、変形菌門に分類される原生動物が原因菌です。
そうか病菌は細菌のため、中性付近の土壌で活発な生育を示し、被害も甚大になりやすくなります。
ですので、硫酸第一鉄を用いて土壌pHを5.0前後にすることで、じゃがいもの収量を落とさず、そうか病の発生を抑制することができます。
一方、粉状そうか病菌は、原生動物に属することから想像できるように、鞭毛(べんもう)を使って水中を泳ぎまわることができる遊走子という器官をつくります。
そのために排水不良の土壌や降雨後など、土壌水分が高い時に発生しやすくなります。つまり土壌が乾燥した条件では発生しづらいわけです。
こちらは土壌pHとの関連性はありませんが、微生物が少ない土壌では発病が激しくなったことが、2019年に発表されたニュージーランドで行われた研究例で報告されています。
このことから、土壌微生物を増やすことで粉状そうか病は抑制され、収量増加につながると考えられます。