JAの直売部会に所属しており、年間通じて野菜を直売所に出荷しています。
部会の中では、栽培に関する技術講習や新しい野菜・品種に関する情報交換などを行なっていますが、売るときの包装資材や荷姿などは原則自由です。
私の場合、包装資材は無地で透明なポリ袋を使っています。
たまに袋の中が曇ったり、水滴がついたりすることはありますが、ほかの部会員も同じ資材を使っているため、大きな不満があるわけではありません。
しかし、主要な野菜を出荷する時期になると、ほかの部会員も同じ野菜を販売するので、競合することがあります。
直売所で売れやすい包装資材を使えば、ほかの部会員との差別化にもなると思うので、どういった資材で梱包すればいいのか、教えてください。
(宮城県・菅原美穂さん/仮名・40代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
お客さんが求める商品像は生産者とは違います。まずは「お客さん目線」で考えましょう
荷姿の美しさや売れやすさについての質問ですが、まずは「お客さんは何を求めているか」を熟考するところから始めるとよいと思います。
デパ地下や高級スーパーで売られている商品の多くは、包装に凝り、お金を掛けて見栄えをよくしています。
その理由としては、自家消費だけではなく、手みやげや贈答品として用いられることも想定していること、また「おしゃれなものを(少々高くても)買っている自分が好き」という見栄に応えるためといえるでしょう。
そのため、売り場の集客力や質感と来客層のマッチングが正しければ、包装資材やパッキングの手間にお金を掛けても、投資した分のお金は回収できます。
一方、直売所に来られるお客さんの消費行動を見てみましょう。
新鮮でリーズナブルな野菜が主目的で、それは自宅用であることがほとんどです。その購買動機には包装の良し悪しはあまり関与しません。むしろざっくりした「採って出しのライブ感」のあるほうが好まれたりします。
生産者さんが気にしておられる荷姿とお客さんが求める商品像では重視する観点が少々異なります。その場合は、“お客さん目線”こそが大切な感覚になります。
「無難に無地の透明袋」が主流なのは、それが売価に対する包材費のバランスがよいから、また売り場の雰囲気と客層との相性がよいからで、こうした長年根付いている慣習にはそれなりの理由があるのです。
したがって、包装がオーバークオリティにならないよう気をつけなければいけません。
さて、以上を踏まえた上での結論です。今のままでよいじゃないかということでは元も子もないので、ひとつアイデアをお渡しいたしましょう。
コストを掛けずにアピールする方法ですが、「ありのままの姿を上手に言い換える」ことで、ある程度効果が期待できます。
例えば、次のようなことです。
1、いろんなカタチや大きさのものに「不揃いの○○たち」という名前をつけてあげる。
2、外側の見栄えが悪くても味が一級品なら「中身美人」というネーミングをする。
3、そして、そのネーミングをした理由を付け加える(その際に「地産地消」や「賢い選択」というキーワードを入れる)。
これをオシャレなデザインラベルにしてポリ袋に貼り付けたりするだけでも、注目度はぐんと上がります。
カタチが悪かったり、不揃いだったりするのをデメリットとして捉えるのではなく、あなたの“ブランドポリシー”として積極的に打って出てみるという戦略です。
コストを掛けず、過不足もなく、「お客さんの気持ちに寄り添う商い」をすること。これこそが、消費者と生産者との距離が近い直売所ならではの「行動規範」であると私は考えています。