私の住んでいる地域では、高齢になったり、体調を崩して働けなくなったりで、生活保護を受ける世帯が増加しています。
保護を受けるためには、家や土地を手放さなければならないので、耕作放棄地や空き屋も増えている現状です。
役所に相談したところ、収入や資産がない人や、頼れる身内がいない人しか生活保護は受けられないと知りました。
資産が何もない経済状況じゃないと保護が受けられないから、自宅や農地を処分した結果、耕作放棄地と空き家が増えていくという悪循環が生まれているのだと捉えました。
私は今、50代になり、親から農家を継ぎましたが、経営が苦しく、老後を考えると心配でなりません。
農業ができなくなったから、保護を受けたくなっても、そのためには代々続く家や農地を放棄しなければならないなんて、どうしたらいいのか…。なんとかならないのでしょうか。
(徳島県・久瀬さん/仮名・50代)
福岡県香春町まちづくり課
福岡県香春町まちづくり課
マッチングや兼業農業の魅力を発信して耕作放棄地の削減に取り組んでいます
福岡県香春町は、五木寛之氏「青春の門」に記された香春岳を有する中山間地にあります。高齢化率が福岡県内でトップ4に入るほど高齢化が進んでいる自治体です。人口の4割以上の方が65歳を超えているといった状況で、高齢化に伴い耕作放棄地も増加傾向でした。
そこで、産業振興課として取り組んだのが、農地を貸したい人と借りたい人とのマッチングの場を提供することです。平成29年度から開始した「香春町農地バンク制度」は、まず農地を貸したい人に登録をしてもらい、農地の地図、写真、面積などをインターネットで公表します。それを検索すれば、農地を借りたい人が登録済みの農地の中から自由に借りたい農地を探すことができます。
この制度で、農地の貸し借りの機会が増えるとともに、情報を蓄積することで、規模を拡大できたり、希望に応じた農地を紹介できたりするようになりました。これまでに163の登録があり、そのうち86件の貸借が成立していて、耕作放棄地の解消や発生防止に大きく貢献しています。
また、香春町の農家は、他の市町村に比べて兼業、小規模農家の割合が多いという特徴がありました。それを逆手に取り、農業を営みながら他の仕事にも携わろうという「半農半X」を提案しているところです。
「半農半Xを実践しながら、地域内外に自らの暮らしを発信し、香春町への「人の流れ」をつくる」というテーマで、地域おこし協力隊に自分たちの暮らしを発信してもらい、興味を持ってくれた人々に香春町を訪れてもらって、最終的には移住に繋げていこうというものです。
私たちのやり方が、耕作放棄地の問題を抱える場所の「正解」につながるかどうかは不明ですが、ひとつの参考例となれば幸いです。