香川県の肥育農家を継いだばかりの30代女性です。飼料にオリーブを混ぜて育てた「オリーブ夢豚(ゆめぶた)」を新たに生産することになりました。
肉質が良く、さらに果糖が高い「オリーブ夢豚」は、フルーティーな甘みが特徴です。味もネーミングも抜群で、香川県でも周知PRにかなり力を入れています。そこで私も「オリーブ夢豚」生産に挑戦し、さらに女性ならではの感性を活かした付加価値の高いオリジナルの生ハムを製造しようと考えています。
香川県では、空調管理せずに自然の空気に当て、土地ならではの生ハム製造に成功している工房があります。計画では生産から生ハム完成まで約2年ほどかかりますが、肥育農家ならではの一貫生産を売りにしたいです。
とはいえ、父はいきなり加工品まで手掛けることに難色を示しています。そこで、空いている古い建物を生ハム製造の工房として改装したり、設備の購入に関する資金はクラウドファンディングで調達することにしました。
金額は80〜100万円程度を集めたいと考えています。ぜひ成功のノウハウを教えてください。
(福島県・秋山さん/仮名・40代)
松田恭子
株式会社結アソシエイト 代表取締役
目的と手段をツリー状に考えて課題を解決していこう
大切に育てたこだわりの夢豚の良さを多くの人に知ってもらい、手応えを感じたいという気持ちが伝わってきました!
まず、お父様を説得するところから考えてみましょう。いきなり「オリーブ夢豚を生ハムに加工したい」と話しても難しいですよね。そういった場合は、課題に対して改善策を考えていくのではなく、目的と手段をツリー状に考えましょう。
例えば、一番の課題が「こだわりの夢豚が他の豚と一緒に出荷されてしまうのでなく、違いをわかってほしい」だったり「不人気部位である、モモやウデを利用して全体の単価を上げたい」だったりしますよね。こういった課題を解決するための改善策は、ひとつではないかもしれません。考えられるものを3つくらいあげてみましょう。
この時に、例えば「生ハムを作る」「豚肉を買い戻して直販する」「バーベキューセットを売る」だと改善策は「加工する」「販路を広げる」など部分的に重複してしまいます。
そのため、より抽象的(あいまい)な改善策(「加工する」「たくさん売る」など)を始めにあげて、その次にその改善策をより具体的にした複数の改善策(「生ハムにする」「直販にする」「ネットで売る」「バーベキューセットにする」など)を考えてツリー状に広げます。
このように考えてくると、なぜ生ハムが良いのか、生ハムだけでなく他の手段もあるのか、などが理由とともに見えてくるようになります。これが見えてくると、経営の中で「生ハムづくり」が果たす役割を位置付けられるようになります。
この検討過程(ツリー状のメモでも)を、お父さんに説明してみませんか?一緒に考える形でもよいでしょう。そうすると、なぜ生ハムをやりたいと言い始めたのかがより理解されやすくなるはずです。
次に、どのように差別化するかを深めていきます。女性ならではの感性を具体的に掘り下げて、商品に反映させることが必要です。ターゲットは?さらにターゲットの喜んで使ってくれる場面とは?具体的に商品の理想的な状況を考えることが重要です。その上で、PR(販売促進)方法や販路開拓のひとつとしてクラウドファンディングを考えていきます。
クラウドファンディングは、共感や信頼を得ることが大事です。あなたの挑戦が、ひたむきなもので、世の中にとって意味があり、周りの人にも積極的に支援してもらっていることなどをきちんと表現していく必要があります。
また、目的を達成するためにはクラウドファンディング以外にも方法がありそうです。何を解決したいのかを考え、その課題に対するいくつかの改善策を考えてみましょう。
その熱意を持ち続けながら、冷静な客観的な分析を忘れずに積み重ねていってください。