宮城県の南三陸町戸倉で20頭規模の酪農農家を家族で営んでいます。
震災ですべて流されて、なんとか4年目に酪農を再開できましたが、国も市も町もなにも補助や支援金がなかったので、すべて自力(借金)で再開させました。
しかし、新型コロナウイルスが流行し始めると乳価が徐々に下がり、さらに餌代も上がってしまい、ほとんど手取りがなくなってしまいました。
そこへ、ちょうど牛の入れ替え時期になってしまい、さらに生産量も下がり続けてます。それに加えて生産調整まで……。
なんとかいまの頭数を維持させようと試行錯誤していますが、元金が無い状態です。
このような時の対策を教えていただきたいです。必要な資金は500万円(運転資金200万、牛300万)で、どうにかこの金額を調達したいのですが……。
(宮城県・一ノ瀬さん/仮名・40代)
野方健志
株式会社プロデュース九州
事業投資が適切であるかを見直したうえで、判断しましょう
搾乳牛20頭以外の乾乳牛と育成牛の飼育数がわからないため、牧場収支の状況はわかりませんが、まずは事業へ投資することが適正かどうかを、次の3つのポイントから考えてみましょう。
1、新しい乳牛の導入費用に必要な300万円についてですが、この金額で何頭の牛が購入できるかの確認が必要です。
廃棄する頭数と同じ数だけ導入するのであれば、搾乳量は変わらないので、収入を大きく増やすことにはつながりません。
2、運転資金200万円を使う目的は何でしょうか? 使い道が適切かをもう一度考えてください。
相談者さんが、ただ赤字を補填するためだけに、なんとなく200万円くらい必要だと考えているのであれば、注意しなければなりません。
これから先、確実に収益アップが望めない状況下で、先々の経費増を見越した赤字補填金を手に入れても、諸経費が増えれば増えるほど運転資金は不足し続けるからです。
3、震災後に牧場を再建するために借り入れた返済残高はいくらでしょうか?
今もなお、完済していないのならば、再建資金の借入残金と返済額(年間)が、今後の事業資金借入金額の基準となります。
相談者さんが望んでいる500万円を新たに借り入れた場合、この新規借入金の返済が、これまでの借入返済残高に加算されます。ここで、新旧の借入金を足した返済額が、現在維持したい乳牛頭数(搾乳量・出荷量・売上)で本当にまかなえるかをよく検討してみてください。
私が経営コンサルタントを請け負っているクライアントの牧場でも、ご相談者さんと同じような問題を扱ったことがあります。
その牧場でも、設備の老朽化や、労働者不足、高騰化する飼料や燃料費をどうするかといった問題を抱えていましたが、飼養規模を拡大することを提案して、問題解決に導きました。
私は、そこの牧場で乳牛の飼養頭数を、どれくらい増やせば、新たな設備を導入する資金融資が受けられるのかシミュレーションを行いました。
さらに、新たな従業員の雇用に関わる人件費や、未払い金などの問題を抱えながら、新旧の借入金の返済が可能かを検討したうえで、事業投資を行う項目や借入金の限度枠と、その返済方法について決定しました。
ご相談者さまも、まずは現在の事業投資が適切であるかを見直したうえで、今後借入を行うかなどの判断を行うと良いのではないでしょうか?