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暑熱対策として牛舎に遮光カーテンを設置しましたが、牛の健康に影響はないか?

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暑熱対策として牛舎に遮光カーテンを設置しましたが、牛の健康に影響はないか?

広島県で畜産業を営んでいます。

夏に気温が高くなりすぎると牛にも影響が出るので、今年から暑熱対策で牛舎に遮光カーテンを設置しました。

太陽光が遮られたことで牛舎内の室温は下がったのですが、その反面、日中でも牛舎がかなり暗くなり、牛の健康に影響を及ぼさないか心配です。

暑いよりはいいと思うのですが、日光があたらないことで牛に影響はないのでしょうか?
(広島県・佐々木由佳さん/仮名・30代)

一條俊浩

岩手大学 農学部 共同獣医学科 准教授

日光は大事ですが、牛舎が真っ暗でなければ、さほど大きな影響はありません

遮光による動物への影響について、産業として生産物の増産と品質の向上を目的にさまざまな研究報告がありますが、動物の種類や品種によっても異なります。

例えば採卵鶏では、人工的に照度を調整することにより、産卵率に影響が出ます。

また、肥育牛は血液中のビタミンA濃度を低くすることで肉質(脂肪交雑、いわゆるサシが入る)が良くなりますが、この影響で瞳孔反射(光の強さに応じて、瞳孔を変化させることで、網膜に届く光の量を調整する動き)が遅くなってしまいます。

光による刺激を大きく受けるため、ストレス回避のために、あえて牛舎内を暗くします。

今回のご質問は牛ということで、飼養目的は肉用牛なのか乳用牛であるか不明ですが、太陽光による牛の生体反応について説明します。

まず、牛で最も重要な生理反応のひとつにカルシウム(Ca)代謝があります。Caは生体の中でとても重要で、筋肉の動きや神経伝達にも重要な役割を持ちます。

Caは常に食事から摂取され、その多くが骨に蓄積されています。また、Caは体の中で常に一定の濃度に保たれていなければなりません。

そして、このCaの吸収や蓄積に大きな影響を持つ物質がビタミンDです。最近ではヒト医学でも、活性型ビタミンDの重要性が大きく取り上げられています。

ビタミンDには、食事からのカルシウムの吸収を促進し、また血中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがあります。

前置きが少し長くなりましたが、この活性型ビタミンDの動きに直接影響するのが紫外線です。太陽光の中にある一定の周波数の紫外線は、Caが骨に蓄積される際に重要な役割を果たします。

例えば乳牛では、分娩前後に血中のCa濃度が著しく低下してしまい、起立不能になってしまうことがあります。

低Ca血症と呼ばれる症状ですが、これを予防するために、分娩前にビタミンD剤を投与することが一般的に行われています。

ビタミンDを投与し、さらに紫外線を浴びることで、Caの吸収が促進され、骨に蓄積されます。ある程度紫外線を浴びることは、骨の健康のためにも必要ということです。

「子供はよく外で遊びなさい」と言われるゆえんですね。

ただし、紫外線はあまり多く浴びると皮膚等への悪影響もあります。紫外線は直射日光を浴びなくても日陰でも十分に効果があります。

結論ですが、牛舎内は真っ暗にしなければ、さほど影響はないと考えます。とくに日本は夏場にかけて紫外線が強くなります。

暑熱対策で寒冷紗などを利用することは、牛にとって特に問題が無いと考えられます。

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