鹿児島県で和牛の肥育農家を営んでいる者です。
牛舎前の道を通るバイクの音や、救急車やパトカーなど緊急サイレンの音で、牛にストレスをかけてしまうことがあり困っています。
音に反応した牛同士が接触をしたり、牛舎の鉄骨へ衝突をしてケガをさせてしまうことがあります。
軽い衝突ならまだしも、ひどい時には衝突による骨折や、暴れた牛が股開きを起こすケースもあり、早期出荷しなければならないほど、経済的損失が出ています。
現在は、1つの部屋(3.5メートル×5メートル)ほどの部屋に2~3頭の牛を入れて飼育しています。
また、牛舎は道路に面しており、道路と牛舎までの距離はおよそ10メートルほどです。
このような、音が原因で起こる牛の事故を防ぐ方法があれば、ぜひ教えてほしいです。
(鹿児島県・和田周平さん/仮名・40代)
加藤武市
加藤技術士事務所
畜舎の移動が難しければ、外壁に防音資材を用いるなどの対策を考えてみてはいかがでしょうか?
一般に騒音暴露を行うと突発反応性を招き、性腺機能の低下、甲状腺機能の反応の進行が見られ、下垂体前葉細胞(下垂体の好塩基細胞で甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、ろ胞刺激ホルモンなどを合成・分泌する細胞)の変化があきらかに認められます。
また、生物がストレスを受けると、副腎に反応が現われ、副腎内のコレステロールおよびアスコルビン酸の減少、血漿中のコルチコステロの増加などの生理的反応が起こるともされています。
ご相談者は鹿児島県ということですが、肉牛の例では、鹿児島県鹿屋市の畜産地帯に、海上自衛隊の鹿屋基地問題があります。
牛舎も基地から東へわずか2キロしか離れておらず、牛舎からは基地を飛び立つ自衛隊機の姿が鮮明に見え、小型ヘリが「バラバラ」とプロペラ音を響かせながら旋回訓練を繰り返しています。
その騒音によるストレスを抱えた成牛は肉色が落ち、相場から5万円ほど値が落ちてしまいます。
肉の締まりがなく、さらに肉色が落ちた牛は「ズル」と呼ばれ値がつかないこともあるようです。
以上述べたように、肉牛への騒音の影響はとても大きいものです。
畜舎の周囲に植林、畜舎の防音などの対策をとることなどが考えられますが、その対策に膨大な経費を要することが想像されますし、どれほどの効果がみられるか疑問です。
まず、今の騒音でのストレス程度、損益計算書から判断して、収益減が常時見込まれるのなら、まず、道路から遠ざけたストレスの少ないところで肉牛を飼わざるを得ません。
畜舎の移動が難しければ、外壁に防音資材を用いるなどの対策を考えてみてはいかがでしょうか?