山形県で、さくらんぼ農家を営んでいます。4月の後半に、足首をひねって骨折してしまいました。
靭帯(じんたい)の損傷と診断されましたが、50代という年齢もあって、完治まで3カ月以上かかる見込みです。
自慢の完熟「佐藤錦」の収穫の最盛期は、6月後半から1カ月程度です。
その期間は満足に作業ができないことになります。目の前が真っ暗になりました。
山形県ではさくらんぼ繁忙期の人手不足を解消するために「さくらんぼ労働力確保プロジェクト」という取り組みがあります。
JA無料職業紹介所やハローワークに相談したところ、収穫やパック詰めなどの軽作業は優先的に面倒を見てくれそうです。
しかし、6月の前半からは雨除けハウスにビニールをかける作業が始まります。
うちのさくらんぼハウスは単管パイプを組み合わせて作った高さ5mほどの簡易的なつくりです。
収穫も含めて危険を伴う高所作業は誰にでもできる作業ではありません。
場合によっては県外から住み込みで手伝いに来てもらうことも考えています。
適正な賃金や保険なども含めて、お知恵を拝借したいです。
(山形県・加藤さん/仮名・50代)
江城嘉一
YUIME株式会社 取締役 人材支援事業統括
まずはJ Aバンクや民間の保険会社に相談してみましょう
大変なけがに遭われましたね。まずはお見舞い申し上げます。繁忙期の人材派遣を希望されているということですが、農作業中や農機具の使用中に、従業員がけがして入院したり、通院することになった場合の保険はあります。
もしも、JA共済に入っている方ならば「農作業中傷害共済」というものがあります。補償を受けられる対象は個人の農家さんの場合、契約を結んだご本人と配偶者、親族、被雇用者(従業員)まで含まれます。
また「記名被共済者限定特約なし」という契約の場合、加入対象の年齢は0〜99歳まで、補償(共済)コースは、100万円、200万円、400万円……などとなっていますが、契約者の年齢によっては加入できないコースもありますのでご注意ください。
一例として、共済額100万円コースなら、年間の賭け金は4,220円〜が目安です。一方、個々の農家さんから、集落営農に参加する場合に「記名被共済者限定特約あり」という、補償を受けられる範囲を限定した契約では、賭け金が少なくなり、先ほどの100万円コースの場合、年間1,620円程度とお安くなりますが、あくまで目安です。
また、農作業の危険度によって、契約や補償内容も変わってきますので、詳しくは最寄りのJAバンクなどに相談してください。これ以外にも民間の保険会社でも、従業員の労災保険のサービスはそろっていますから、一度ご相談されることをおすすめします。
つづいて賃金についてお答えします。まずは、厚生労働省のWebサイトやお住まいのエリア周辺のハローワークなどで、最低賃金を調べましょう。
その上で、人材派遣会社の求人広告なども調べて、似たような作業をしている募集要項を参考にして、時給や日給を算出されることをおすすめします。
農業の人材派遣サービスに関しては、農業に特化した派遣会社から一般の求人会社など、多種多様にあります。「農業の人材派遣」などとインターネットで検索しますと、かなりの会社数が出てくるはずです。
とはいえ、ご存知の通り、全国的な人手不足で、特に農業分野はどこも労働力の確保に苦労しています。賃金についてはライバル農家が上げれば、こちらも上げるというイタチごっこになりますし、求人広告を出しても、高い広告費を取られるだけで、誰も集まらない可能性もあります。
その際にポイントとなってくるのが、他の農家さんとの差別化です。差別化するためには、賃金だけでなく、労働者にとってどれだけ魅力的な職場であるかをアピールすることが重要となってきます。
例えば、住み込みで働ける綺麗な宿舎があるとか、作業が終わったらバーベキューなどができるとか、どれだけ魅力を伝えられるかにかかっています。