栃木で、野菜作りをしている50代の農家です。
この地域の高齢化は深刻で、うまく後継者に引き継ぐことのできなかった者は、規模を縮小したり、リタイアしたりしています。
そのため、耕作放棄地が目立ちます。
幸い、私の家では、長男が就農してくれて大きな戦力となっています。
次男も農業を仕事にするつもりのようで、まだ学生ですが、意欲的に手伝ってくれているので頼もしい限りです。
私もまだまだこれからだと考えていますので、地域のためにも、将来的に規模の拡大を考えています。
そこで、耕作放棄地などの周辺農地を活用したり、経営計画を練り直したりして、「認定農業者」を目指そうと考えています。
認定農業者になると、圃場(ほじょう)を拡大するためのお金を支援してもらえたり、税金も安くになると聞きました。
ところが、農業仲間からは「そんなのまったく必要ない」「メリットがない」という意見も聞きます。
実際のところ、どうなのでしょうか?
(栃木県・中島さん/仮名・58歳)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
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確かに、認定農業者になることで何かよいことがあるのか、わかりづらいですよね。まず、認定農業者は市町村(複数地域にまたがる場合は都道府県や国)から認定を受けることになります。農業経営のプロフェッショナルを育成するのが目的であり、認定されると「行政から認められた農業者」という肩書が得られます。
認定農業者になると、「強い農業づくり交付金」日本政策金融公庫「スーパーL資金」「アグリビジネス投資育成」などの補助金や融資が受けやすくなる、農業者年金(保険料が全額社会保険料控除対象となる公的年金)の国庫助成、税制特例が受けられるなどのメリットがあります。
ほかに、経営所得安定対策などに加入できる、耕作放棄地を借りやすくなるなども。これらのメリットが必ずしも保証されるわけではありませんが、行政として認定農業者と、そうでない生産者から選ぶようなことがあれば、当然ながら認定農業者を優先することになりますよね。
それから、認定を受けるためには「農業経営改善計画」を作る必要がありますが、実はこれが大事なのです。農業経営改善計画には、5年後を目指した農業経営規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、農業従事の態様の改善など、大きく4つの目標と達成のための措置を記載して申請します。
計画がある(目標がある)生産者と、そうでない生産者では前者のほうが成長する可能性を感じさせ、信用力もあります。短期的なメリットだけでなく、長期的に考えても認定農業者になる意味はあるかと思います。