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トマトをハウスで栽培していますが、炭酸ガスで収穫量をアップできるのでしょうか?

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トマトをハウスで栽培していますが、炭酸ガスで収穫量をアップできるのでしょうか?

神奈川県でハウスでのトマトの土耕栽培、さらに露地栽培で多品目の野菜を育てています。ハウスのサイズは50メートルほどの3連棟で、面積は10アールほどになります。

収穫した作物は市場出荷だけではなく、ECサイト(インターネット)での直売もやっています。

ECサイトではリピーターさんも増えてきており、今後の経営についてあれこれと考えているところです。

ハウスを増やして収量を上げようかと思いながらも、コストや労働力の問題があるので、躊躇しています。

いまのハウスの規模は変えずに収量をあげる方法はないかと仲間に相談してみると、「炭酸ガス施用装置」を導入すれば収量を上げることができるという話を聞きました。

実際に導入すると収量アップは確実にできるのでしょうか?実際に収量アップできるのであれば、どれくらい増えるのでしょうか?
(神奈川県・前田さん/仮名・50代)

生田智昭

株式会社大地のいのち(サンビオティック)代表取締役

炭酸ガスの効果とコストは慎重に検討しましょう。光合成促進の資材もあります

一般的に考えられる範囲での回答となります。

ご存じのとおり、植物は光合成をすることにより、生長したり、トマトの実を大きくしたり、味が良くなったりします。

光合成には、二酸化炭素が使われるため、二酸化炭素濃度を高めると、光合成のスピードが早まり、生長が良くなったり、収量が増えやすくなる傾向にあります。

大気中には概ね400ppm(0.04%)前後の二酸化炭素が含まれています。

夜間は、植物や土壌微生物の呼吸により、ハウス内の二酸化炭素濃度はそれよりも高まります。高いときは、早朝で1,000ppmを超えることも珍しくありません。

しかし、日が昇り、光合成が始まると、植物が二酸化炭素を吸収して、ハウス内の二酸化炭素濃度がどんどん下がっていきます。

もしも換気をしないでいると、二酸化炭素濃度は、外気の400ppmよりも下がってしまい、光合成の能力が極端に下がってしまいます。

昼間の、本来なら最も光合成が高まる時間帯に、「息切れ」で光合成ができない事態に陥ってしまう、というわけです。

ハウス内の二酸化炭素濃度は、外気を入れれば400ppmに近づくわけですから、換気の回数や時間帯と関係しています。

冬場の寒い時期には、換気をするとハウス内の気温が下がってしまうため、換気を控えることになると思いますが、それにより、二酸化炭素濃度が低下して、光合成が低下してしまう、ということです。

光合成が低下すると、収量が落ちるだけでなく、味も悪く、病害虫に弱くなり、良いことがありません。

そこで、日中のハウス内の二酸化炭素濃度を外気の400ppmを下回らないように、二酸化炭素の施用装置で供給するというのが、現在主流の環境制御(二酸化炭素濃度の制御)の考え方です。

二酸化炭素を供給することは、当然に相当のコストも発生しますから、どの程度の費用対効果があるかは、ケースバイケースであると思います。

ご質問の「確実に収量アップするのか、どのくらい収量アップするのか」というご質問には、明確にお答えすることができません。ただ、一般的には、1~2割程度は、収量アップする事例が多いのではないでしょうか。

炭酸ガス施用にあたって、「生ガス式」か「燃焼式」かのどちらを選択するかどうかは、取り扱うメーカーや燃料店、農業資材店などに相談いただくのがベストです。

現在、質問者のトマト生産の障壁となっているのが、二酸化炭素濃度にあるのであれば、効果は絶大だと思いますが、そうではなく、日照条件や水管理、その他の管理技術の問題や、土壌病害などにあるのであれば、コストに見合った増収効果がでない可能性もあります。

まずは、二酸化炭素濃度センサーを設置し、現在のハウスの二酸化炭素濃度の経時変化を把握してみて、二酸化炭素が不足しているのかどうかを確認するのも良いと思います。

さて、二酸化炭素発生装置には、大きく分けて2種類あります。

ひとつは、灯油やガスを燃焼させ、その排気ガス(炭酸ガス)を利用するもの。
もうひとつは、液化炭酸ガス(生ガス)を利用するものです。

基本的には前者の方がコストが安い場合が多いですが、燃料費の高騰の影響もありますし、取り扱いのしやすさなどの問題もありますから、それぞれのメリット、デメリットについては、各装置のメーカーや資材店に相談して、よく吟味してください。

環境制御技術というのは、二酸化炭素濃度のほか、光合成の量を制限するさまざまな要因、たとえば気温や日射量、水、湿度、肥料などの要因を見える化し、最適な状態に近づけるようにコントロールすることです。

それによって光合成を最大化するのですが、それを「見える化」するだけでコストがかかりますし、それを自動制御によってコントロールするとなると、さらに多大なコストがかかります。

最後に、ひとつ付け加えるならば、土壌から発生する二酸化炭素も、無視できないと考えております。

つまり、土の中には、10アールあたり数千kgにも及ぶ土壌微生物や生物が住んでいます。

彼らは、私たち人間と同じように呼吸をして、二酸化炭素を放出していますから、彼らの活性を高めると、自然と土壌から多くの二酸化炭素が供給されることになります。

しかも、都合が良いことに日中気温が高まると、土壌微生物が活性化されて二酸化炭素の放出が高まります。

微生物は、土壌中の有機物を分解してそれをエネルギーに呼吸し、二酸化炭素として放出していますから、土壌に有機物を施用する意味が、こういう点にもあるという事です。

たとえば、炭素率の高い堆肥などの有機物を土壌に混和したり、通路部分にもみ殻や稲わら、その他の有機物を敷き詰めたりするのも良い方法です。

そして、二酸化炭素を放出する優良な土壌微生物を増やすためには、微生物土壌改良資材「菌力アップ」を施用するとさらに良いです。

好気性ですから、酸素を吸って二酸化炭素を発生させます。同時に、土壌の団粒化を進め、植物の根の働きを高めてくれます。

二酸化炭素施用のコスト高が気になる場合は、これも選択肢のひとつとしてご検討されたら良いと思います。

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