野菜農家です。直販をメインに、少量多品目栽培で旬の野菜を年間50種ほど手掛けています。
おかげさまで、県外のお客さまも多くなりました。送料を負担していただいているので、ボリューム感と包装の工夫でお得感を演出しています。
最近、地域の農家さんが、いわゆる「取り込み詐欺」にあったそうです。
最初は少ない量の取引だったが、信頼関係ができたころに大量の注文が届き、それに応じたところ連絡も入金も途絶え、商品だけを奪われてしまったとのこと。
いつも取引している出荷先に加え、直販系のインターネットサービスなど、販路も多様になってきています。
入金までお客さまの顔も声もわからない取引もあります。
私も飲食店やさまざまな法人のお客さまから注文が入ることがあるので、こうした被害を防ぐべく、注意をしていきたいです。
近隣の農家とも共有したいので、注意すべきポイントを教えてください。
(山梨県・佐々木さん/仮名・40代)
河原崎 弘
弁護士 河原崎法律事務所
詐欺は巧妙化しています。収穫期の大量発注に注意し取引は「現金前払い」で
インターネット上で農家がお客と直接取引する機会が増えていますが、詐欺には要注意です。農家がSNSに投稿した内容から個人情報を特定し、接近してくる悪質な業者があるほどです。
特に、収穫期は要注意です。取引実績のある業者だからと、通常より大量の発注であるのに後払いに応じたりすると、それが仇となることがあります。
こうした直接取引では、価格交渉から支払い確認まで、すべて自分でやらなければなりません。その際に最も重要なのは、きちんとした会社かを見極めることです。
「取引前に相手の商業登記の確認をしよう」といった対策法が紹介されることがありますが、商業登記では詐欺業者かどうか見抜けません。
登記には登録年月日、代表者、所在地などの情報が載っているだけで、最初から詐欺目的で会社を登記している可能性もあるからです。
また、取り込み詐欺業者は「会社設立して詐欺を行い、意図的に倒産させ、また設立……」という流れを繰り返します。
中には「倒産を前提にできる限りの借金をし、大量の商品を代金後払いで購入して、ディスカウントストアなどに商品を売ったらすぐに倒産する……」という手口を繰り返す業者さえいます。
被害を防ぐには、新規取引の際には信用が担保できるまでは十分に警戒し、手形ではなく現金取引することを強くおすすめします。
親しい知人からの紹介だからと、簡単に信用しないことです。少しでも怪しければ、入金が確認できるまでは絶対に納品しないことを徹底しましょう。
もし被害に遭ったら、弁護士か警察に相談しましょう。ただし取り込み詐欺の被害金は、ほとんどの場合裁判をしても戻りません。「自分の身は自分で守る」を肝に銘じ、最善の注意を払うしかありません。