東京で農業をしている20代です。昔から農業に魅力を感じており、農業高校を卒業した後に大学へ進み、JAに就職しようと考えていました。
しかし、これからはJAに依存するのではなく、自立することが必要だと思い、卒業後は農家の手伝いをしながら農業ビジネスを広げることばかり考えています。
手伝いをしている農家さんは非常に協力的で、私のアイデアの後押しをしてくれます。
先日は地域のレンタルスペースで町のレストランさんにも協力していただき、地元野菜を使ったオリジナルメニューの実食イベントを開催しました。
コロナ禍でしたので感染対策にも細心の注意を払い、人数制限で行いましたが、非常に手応えがありました。
現在は、外出が減っている高齢者向けに、定期宅配するサービスを実験的に始めました。近隣農家にも声をかけて、流通に出せないB級品、C級品の野菜を少量セットにして宅配する内容です。
しかし、まだまだ人手が足りず、悪戦苦闘中です。独自の販路を広げるために、企業とつながる方法、ビジネスモデルを教えてほしいです。
(東京都・黒田さん/仮名・40代)
藤野直人
株式会社クロスエイジ 代表取締役
地域商社と地域の切り取り方を深め、新規の販路を開拓
農家がJAに依存せずに成功するビジネスモデルは、かなり増えてきています。特に農業法人や若手農家たちがJAに依存せずに 「自分たちで作ったものを自分たちで売る 」 という流れは全国的にできてきました。
こういったJAに依存しない「農家をサポートする立場」をめざす場合、「地域商社」という単語で情報を集めてみるといいでしょう。2020年に「図解入門ビジネス 最新 地域商社の基本と仕組みがよ~くわかる本」という本が出版され、「地域商社」について非常にわかりやすく解説されています。
「地域商社」で考えておくべきなのは、「稼ぎ方」と「地域の切り取り方」です。
稼ぎ方については
1、コンサルタント(販売促進や商品開発、経営コンサルタント、システム提供などのサービスで収益を得る)
2、流通(実際に農産物を仕入れて売ることにより差益を得る)
3、小売や飲食(インターネット販売や実店舗での物販や飲食を通じて収益を得る)
そして、地域の切り取り方は、
1、市町村型(約1700ある自治体の中で特定の自治体の農家を対象にする)
2、県域型(「〇〇県の地域商社」といったイメージ)
3、広域型(九州や東北、瀬戸内、日本の地域商社といったイメージ)
この3つのタイプから自分がどのエリア、どの範囲の農家の支援をしたいのかを考えるといいでしょう。
ポイントは、社員1人当たり粗利(付加価値)を年間2,000万円にどう近づけるかという事が基本となります。まずは500万、次いで1,000万、できれば2,000万です。
粗利なので、例えば農産物を4,000万円で仕入れて5,000万円でレストランに売った場合は1,000万円の粗利です。インターネット通販で3,000万円で売り、仕入れに1,500万かかった場合は、1,500万円の粗利です。30万円で農家の経営計画を作成した場合は、30万円の粗利です。
手間がかかったり、農家との信頼構築に時間がかかる事業です。まずは自分一人なら粗利1,000万円くらい稼げるな(できれば2,000万)と思ったら、徐々に人を増やすとよいでしょう。忙しいのを理由に人手を増やしてしまうと失敗します。儲かってない事業を拡大していては意味がありませんから。
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
さまざまな方々と交流するのが、一番の突破口になります
素晴らしい志です。そういう方が増えていくことによって、農林漁業にさらに関心を持つ人が増えていきます。ぜひ頑張っていただきたいです。
レンタルスペースでのイベントは素晴らしいですね。消費者と生産者、さらに料理店などをつなぐことで、人間関係が深まるなど、地域活性化にもつながる企画です。レストランは料理を作るスペシャリストですので、生産者にとっても自分の農産物が料理になって食べられるのは嬉しいと思います。
あとは、それを単発(1回きり)で終わらせてしまうのではなく、どう定期的に開催するのか?また、実際にそのレストランも含めて地域の農産物をどう外食とつなぐのかを考えてみていただきたいです。
また、定期宅配についてもアイデアは素晴らしいです。ただ、本来捨てるはずだった「規格外品」を活用することも重要ですが、規格外品は量が安定しないという課題もあります(生産量の10~20%)。
そのため、規格外だけにこだわってしまうとビジネスとしてもスケール(拡大)が難しいのが現状です。需要と供給のバランス、消費者と生産者のニーズを折り合わせ、双方の理解をすり合わせていく必要がありそうです。
うまく企業と繋がる方法やアイデアを広げるビジネスモデルは、生産者から加工事業者、流通事業者、小売・外食事業者等、さまざまな方々と交流するのが一番だと思います。なにげない会話から大きなヒントを発見することもできます。
私自身が1次、2次、3次産業を繋ぐことをミッションとしていますので、ご興味があればご連絡ください。共に農林漁業の発展のために切磋琢磨していきましょう。