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義兄が勝手に義父の畑を自分名義に変えてしまった!元に戻す方法はありますか?

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義兄が勝手に義父の畑を自分名義に変えてしまった!元に戻す方法はありますか?

我が家は兼業農家で、義父宅から少し離れた場所にある義父の農地を借りて、夫婦で畑仕事をしています。

夫は3人兄弟の一番下で、義父は常々「私が死んだら、長兄に任せている私の畑は兄弟で1/3ずつ公平に分けなさい」と言って、もう10年以上も前から白地図に3人の土地の場所と氏名を記して用意してくれていました。

盆、暮れ、正月と本家に親戚一同が集まる際によく義父が見せていたもので、妻である私も知るところです。ところが数年前、義父は認知症が急激に進行して施設に入ってしまいました。

そんなある日、夫が相続予定の土地について下の兄と話していたところ、義父が施設に入るまで一緒に暮らしていた長兄が「この土地で農業を手伝ってきたのは俺だから、この土地は俺が継ぐべきだ。親父が死んでから相続すると税金が高いから、俺の名義で登記しておいた」と事後報告してきたのです。

それには夫も下の兄も驚いて抗議したのですが、長兄は「親父が体調がいい日に自分で書類に必要事項を書いたから違法ではない」と言い張ります。

末っ子とはいえ私たち夫婦も農家をしているのに、長兄が義父の農地を継ぐべきというのは横暴ですし、納得がいきません。できれば裁判をせずに、義父名義に戻すことはできませんか?
(群馬県・藤原さん/仮名・50代)

弁護士法人中村・大城国際法律事務所

弁護士法人中村・大城国際法律事務所

訴訟ではなく調停を行うことで軟着陸を目指せるかもしれません

まず、相談者の夫の長兄が認知症の父に土地の名義変更の書類を記載させたことの法的問題点とは?という点について解説します。

契約等の法律行為は、自己の行為の利害得失を判断する知的能力(以下「意思能力」といいます)が欠けていた場合には無効になるとされています。契約当事者の一方が契約締結当時に認知症であったという事実は、意思能力がないことを基礎づける一事情になりうるものです。

本件では、長兄が言う通り、父が自ら土地を長兄に贈与するための必要な書類に必要事項を記載したのであれば、父から長兄に土地を贈与する契約が成立している可能性があります。

しかし、父は認知症のため、その症状の程度等にもよりますが、贈与契約締結当時に意思能力を欠いていたと判断され、土地の贈与契約は無効になるかもしれません。

他方で、真実はそもそも父と長兄の間の贈与契約など存在せず、長兄が贈与契約書等を父に無断で作成したという可能性もあります。

土地の所有権を移転する場合、法務局に移転登記申請を行う必要がありますが、その際に契約書等の登記原因証明情報を提出する必要があります。

そのため、少なくとも長兄と父が契約当事者となっている土地の贈与契約書が作成されているものと考えられますので、その贈与契約書の原本を確認してみましょう。筆跡は本当に父のものでしょうか。

また、契約当事者欄に押印されている印影は父の印鑑のものでしょうか。仮に、贈与契約書が長兄の偽造したものであった場合、結果として長兄は、父が長兄に土地を贈与するとの意思を表示したことを証明できないことになる可能性があります。

このように、「親父の体調が良い日に、自分で必要な書類に必要な事項を記載したので、法的な問題はない」との長兄の主張が虚偽である場合はもちろん、真実であったとしても土地を長兄に贈与するという契約は無効となる可能性があります。

それでは、具体的にどのように話を進めるべきなのでしょうか?

認知症にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症等、いくつか種類があり、種類ごとにその症状は異なりうるようです。

加えて症状の程度や認知症の進行速度等も個人差がありますので、契約締結当時に意思能力を有していたか否かの判断は容易ではありません。

また、贈与契約書が偽造されたものか否かを争うには法律の専門知識が必要です。そのため、いずれの点も当事者間で直接協議をしても解決できないことも多いと思います。その場合は、弁護士を代理人として協議を行うことが考えられるでしょう。

もっとも、事情如何では代理人を通じた協議でも、解決できない場合もありうると思われます。

代理人による協議でも解決できない場合、訴訟などの法的手続きを取ることになりますが、相談者のように「できれば訴訟を避けたい」という場合、調停手続を利用することもできます。

調停手続とは、一般市民から選ばれた調停委員と裁判官が当事者の間に入って協議を行うものです。訴訟とは異なり、最終的に裁判官が判決を下すのではなく、あくまで当事者間の協議による解決を目指します。

そのため、調停は訴訟よりもソフトな手続といえ、親族間に決定的な亀裂を生じさせずに軟着陸を図れる可能性があります。

なお、この回答はご相談頂いた事情から一般的な内容として回答したものですので、詳しい事情次第では結論が変わる可能性もあります。

特に、親族の認知症に伴う問題は法律や医学の知識がなければ適切な解決が困難な場合も多いため、まずはお近くの弁護士にご相談いただくと良いと思います。

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