にんにく農家を営んでいます。敷地面積は30アールほどで、毎年5万株ほどを作って出荷しています。
現在は「上海早生(シャンハイワセ)」だけ栽培していますが、地元の市場から「健康志向ブームで黒にんにくの需要が高まっている」と話を聞き、農地の片隅で加工用の「福地ホワイト六片」を栽培しようかと考えています。
自分で栽培から製造まで行うことを想定していますが、黒にんにくの製造経験がないので、設備費や必要経費がどのくらいかかるか想像がつきません。
最初は10アールほどの農地で、1万株ほどの福地ホワイト六片として栽培してみようと考えています。
1万株の黒にんにくを自分で製造する場合、必要となる設備や経費について具体的に教えてほしいです。
(宮崎県・里中正大さん/仮名・50代)
蛇岩真一
株式会社AGRIER・中小企業診断士
小型の専用機で数百万円~、ランニングコストは数万円/月ほどが必要になります
10アールの広さの農地で収穫したにんにくを、黒にんにくに製造する場合に必要となる設備と期間を考えてみました。
反収1,000キロ(乾燥終了後)と仮定した場合、専用の黒にんにく熟成機(1回に100キロ前後熟成できる小型機)を使用すると10回転させることになります。
1回の熟成期間が約20日とすると、全体で200日(6~7カ月)かかります。
そのため、貯蔵中に発芽しないようマイナス2度前後で冷蔵する冷蔵庫(2坪程度)がないと原材料がダメになってしまう懸念があるので注意して下さい。
また、熟成開始から数日間は強烈な臭いが出ますので、専用の施設または臭いの影響が生じない場所の確保、熟成機(家庭用ではない専門の機械)の購入・設置費用、機械のメンテナンス費用も必須です。
専用機は、小型のもので数百万円~が相場だと思います。
それから、にんにくは暖地系と寒地系に大別され、福地ホワイト六片は寒地系の品種です。
栽培適地が関東以北ですので、標高等によっては育つかもしれませんが、品種は暖地系にんにくから選んだ方が無難だと思います。
初期投資は、種子代金を除き、熟成用倉庫がどこかを流用できれば、前述したとおり小型のもので数百万円~、設備のランニングコストは数万円/月(主に電気代)と思われます。
それ以外に、包装デザイン、包装資材、仕込み作業の人件費、PL(生産物賠償責任)保険等のコストを見込んでおいた方がいいのではないでしょうか。