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沖縄でサトウキビの栽培をはじめた農家です。これまでは、苗を購入してサトウキビを育てていましたが、苗が高騰する可能性を考えて、今後苗から栽培することを検討しています。
もともと、サトウキビの収穫作業を手伝っていた流れから、独立して農家になったので、苗を育てた経験はありません。
どんな苗を育てると良いのか、どうすれば良い苗に育ってくれるのかなど、基本的なことですが、栽培方法を教えて下さい。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
サトウキビの育苗は苗選びとかん水が重要
サトウキビの苗の育て方
サトウキビの育苗は現在「茎節切苗による増殖」が一般的です。まず、切苗を植え付け出芽した茎の地下節芽からさらに茎を2〜3本分げつさせ、茎数を増やしていきます。
最終的に1本の茎から4〜6本の切苗（2節苗）にし、これを栽培します。必ず栽培する場所とは別の苗畑を用意して育てるようにしましょう。
サトウキビの苗には「春植え用」「夏植え用」の2種類があり、それぞれ特徴があります。
春植え
一般的に、種苗の植え付けから約半年〜10ヵ月以内に育苗を開始することが奨励されています。春植え用の苗の場合は6月頃から育苗を行い、苗ができるまで約8ヵ月かかります。
良質な苗を作るポイントは4つです。
1、植え付け後にしっかりとかん水を行うこと。かん水の有無が発芽率に大きく影響します。
2、ていねいに除草を行うこと。
3、肥料は通常より少し多めに施肥することです。
4、病害虫対策も忘れず行いましょう。
夏植え
夏植え用の苗も春植え用と同様、育つのに約半年〜10ヵ月以内程度必要です。品種や栽培地域によりますが、12月から2月の間に植え始めます。植え付け後のかん水や管理は、春植え用の場合と同様です。
サトウキビの良い苗の選び方
サトウキビは同じ圃場でも良い苗か悪い苗かで発芽率や収量が変化します。そのため、まずは苗畑から良い茎苗を選ぶことが重要です。茎苗を選ぶ際、下記のような特徴のものは避けましょう。
硬い芽
約10ヶ月以上生育している茎は下部の芽が硬化しているため（硬化芽子：こうかがし）、その部分を苗として利用すると発芽しづらくなっています。
芽が伸びている茎
すでに芽が出ている茎を選ぶと、定植後に芽が欠けてしまうことがあります。同様に、穂が出てしまっている茎も発芽しにくい傾向にあります。
養分が多い茎を使用しましょう。穂が出てしまっていると茎の養分は少なくっています。
病害虫が発生している茎
サトウキビがよくかかる病気には黒穂病、モザイク病などがあります。
一度発症してしまった畑から苗をとると、同じ病気を繰り返す可能性が高いので、そのような茎は避けましょう。
また、変色（赤変や黒変）していたり害虫痕がないかも確認する必要があります。
サトウキビの品種の選び方についてはこちらをご覧ください
「サトウキビの品種とそれぞれの特徴を教えて欲しいです」
サトウキビを苗から育成する際の注意点
サトウキビを種苗から育成する場合は、栽培地の奨励品種を選んで育てましょう。奨励品種以外の古いものを選ぶと、病害のリスクが高まるとともに生育も良くないことが多いです。
育成管理でもっとも重要なポイントはかん水です。
サトウキビ栽培の適切なかん水量についてはこちらをご覧ください
「サトウキビ栽培の適切な水やりの量とタイミングが知りたい」
また、種苗から育成する場合は、苗場の確保や人件費といったコストがかかります。
こうした個人農家にかかる負担を軽減するために種苗生産を集約し効率化させる民間団体も増えていますので、栽培効率や費用対効果を考えたうえで栽培方法を検討しましょう。
サトウキビの栽培方法についてはこちらをご覧ください
「サトウキビの栽培方法が知りたいです！育て方や注意点を教えて」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。