最近、米余りや米価の下落がニュースになることが多く、私もただ米を作って売るだけでは厳しいと感じるようになってきました。
そこで、今までやってきたことを改善して、収量や食味の向上に取り組もうと考えています。
しかし、就農してからまだ5年ほどで、改善するといっても、何をどうすればいいのかわかりません。
米作りを工夫する方法について、どんなことができるのか、教えていただけないでしょうか。
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佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
米作りの工夫の事例はたくさんあります!できることから実践しましょう
米の栽植密度
コストの削減や病害虫の発生を抑えたいのであれば、疎植栽培がおすすめです。
疎植栽培とは、苗を植える株間や条間を、通常の栽培に比べて広くすることです。
通常通常の株間が15~18センチであるのに対し、疎植栽培の場合は24~28センチまで広げます。
疎植にすると、使用する苗の量が少なくなり、苗にかかる費用の節減や省力化することができます。
疎植栽培は、光を効率的に利用するという点でも良いとされ、倒伏防止、収量向上や病害虫に強い栽培が可能となります。
ただし、良い点がある反面、土壌還元害など初期生育不良が発生すると、減収や品質低下しやすい点もあります。
収量が多い品種
なるべくたくさん作りたいという農家さんには多収性の品種がおすすめです。
にじのきらめき
にじのきらめきは、2018年に農研機構が開発した品種です。
イネ縞葉枯病に対して抵抗性を持ち、短稈(稲の茎が短く)で倒伏への耐候性に優れています。
コシヒカリよりも玄米収量は15%程度多収で、多肥栽培にすると30%程度収量が多くなります。
ゆきさやか
ゆきさやかは北海道での作付を狙い開発された品種です。
アミロース含有率やタンパク質含有率も低く、登熟期に高温にさらされても食味が落ちにくいとされています。
収量もゆめぴりかと比較して一本分(30キロ)多く収穫できるので、一反当たりの売上向上につながります。
低温乾燥
米の乾燥にはさまざまな方法があります。
昔は刈った稲をそのまま圃場に吊るす、天日干し乾燥が主流でした。
しかし、現在では機械による温風乾燥が進み、収穫物の乾燥時間を大幅に短縮できます。
最近では高温よりも低温でじっくり乾燥させる方がおいしい米になることがわかってきました。
低温乾燥の場合、戻り現象(水分の多い籾から水分の少ない籾に水分が移る現象)が起きません。
これにより、玄米の水分値が一定になり、乾燥のムラができなくなります。
グラニュー糖の散布
収量や品質、食味を良くするには、デンプンやその他の多糖類などの有機物を稲に蓄積させることと密接に関係しています。
近年の研究の結果、植物が根からアミノ酸(有機物)を吸収していることが、明らかになってきています。
稲は低分子の炭水化物やアミノ酸、金属や非金属によりつくられます。
このうち、炭水化物は光合成でもつくられますが、根から直接吸収が増えると天候に左右されない安定した収量や品質が得られます。
育苗において、無機肥料を与えるよりも、グラニュー糖などの低分子の炭水化物(グラニュー糖の場合、育苗箱あたり5グラム)を与えた方が、茎は太くなり、発根力(根の再生力)があがり、植え傷みにも耐性を持ちます。
さらに、活着がよくなるので、強風にも強くなるのです。
また、雑草よりも根が張るので、農薬不使用栽培にも効果があります。
炭水化物の根からの吸収量を増やすには、土壌有機物を増やす必要があります。
つまり、堆肥などを与えて土づくりを行うことが重要です。
このお悩みの監修者
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
滋賀県の改良普及職及び研究職を経て、2014年に「佐々木農業研究会」を設立。農業経営技術コンサルタントとして、栽培技術の指導や農業生産者の自己研鑽活動を支援。会員は秋田から愛媛まで80人。日本水稲品質・食味研究会および日本科学者会議(支部は滋賀県)会員