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暑さに強く生食できる白菜のタイニーシュシュはどう栽培する?

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暑さに強く生食できる白菜のタイニーシュシュはどう栽培する?

新品種の野菜の栽培に興味があり、ミニ白菜のタイニーシュシュが気になっています。

収穫までの時期も早く長期間収穫できるので、収益性も高いのかなと思っています。

販売されているタイニーシュシュをみてみると、結構サイズ感が違うように思うのですが収穫時のサイズの規定などはあるのでしょうか?

またスケジュール感や植え方など、従来のイメージの白菜とはかなり違うようですが、実際はどのように育てるものなのでしょうか。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

白菜のタイニーシュシュは自分で収穫サイズと株間を決められる品種です

白菜・タイニーシュシュの栽培方法


白菜は、北・東ヨーロッパからトルコ高原にかけて自生している野生種から進化したもので、中国へは栽培植物として導入されたと思われます。

冷涼な土地でずっしり大きく育つイメージの白菜ですが、近年はさまざまな新品種が開発されています。

ミニ白菜は少人数家庭でも食べ切りやすいサイズで、保存がしやすいほか、食味の良さからも消費者に人気です。

「タイニーシュシュ」もミニ白菜の一種で、種苗メーカー・サカタのタネが交配しました。

名前は、英語で「小さい」を意味する「tiny(タイニー)」と、フランス語でキャベツや白菜のことを表す「chou(シュー)」の組み合わせに由来します。

「ゆめいろハクサイ・タイニーシュシュ」と「耐病黄芯50日・タイニーシュシュ」がありますが、ここでは「ゆめいろハクサイ・タイニーシュシュ」について解説します。

タイニーシュシュの特徴


タイニーシュシュは、以下のような特徴がある白菜です。

1、種まきから収穫まで50日前後の極早生(ごくわせ=生育期間が極めて短く、早く収穫できる)種
2、200gから1200gまで、どの大きさでも収穫できる
3、暑さや雨に強く、夏でも栽培できる
4、密植栽培できる
5、一般的な白菜にある毛茸(もうじ=細かな産毛)がなく、生でも食べやすい

石灰欠乏症などの生理障害にも強く、白菜の中でも育てやすく、初心者農家向きの品種です。

密植することで大量収穫も可能で、経済的にもすぐれています。


夏にも収穫できるタイニーシュシュの栽培スケジュール


夏期でも栽培・収穫できるのが特徴の一つですが、実際の作業スケジュールはどのようになるのでしょうか。

一般的な栽培条件で、種まきに適した時期は、4月下旬~9月中旬です。

収穫は、種まき時期に応じて5月頃~12月頃までとなります。収穫の最盛期は5~7月と10~12月の2回です。

4月下旬よりも早く播くと、とう立ち(抽苔ちゅうだい=結球する前に先端の部分が開き、そこから茎が伸びて花が咲いてしまう現象)が起こる恐れがあります。

そのため、移植栽培では、育苗期に最低温度が13℃以下にならないような管理が必要です。

また、9月中旬よりも遅く播くと、気温が低すぎて結球しない可能性もあります。

一般的な栽培スケジュールにのっとった場合でも、気温が低い場合は、ハウス、トンネルでの温度管理が必要です。


種まき・育苗


地面に直播きすることもできますが、セルトレイやポットで育苗した方が、虫の防除を含め、管理しやすいでしょう。

直播きの場合、穴1つあたり4~5粒を播きます。播種後温度を20~25℃で管理すると、播いた後2~3日程度で発芽が揃います。

その後、2段階で苗を間引きます。1回目は本葉(子葉の後に出る葉)が2枚になった頃には2本に、そして4~5枚になった頃には1本になるようにしてください。

乾燥が大敵ですが、種まき後は乾燥しやすいので注意が必要です。しっかり水やりし、土と種が密着するように上から押さえると良いでしょう。

セルトレイの場合は、本葉が3~4枚の頃が植え替え適期です。

他の品種よりもとう立ちが起こりやすいので、低温期に育てる場合、本葉4枚になるまでは、保温・加温してから畑へ植え替えましょう。


密植も可能、収穫したいサイズに応じて株間を決める


タイニーシュシュの大きな特長は、栽培期間と収穫サイズを農家が選べるという点です。

栽培日数45日の最短期間・最小サイズで収穫する場合、白菜は200gほどになります。

株間は15cm×15cmを基準にしてください。

栽培日数65日の最期間長・最大サイズで収穫する場合、白菜は1200gほどになります。

株間は30cm×30cmを基準にしてください。


スピード収穫品種のため、元肥をたっぷり与える


栽培期間が短いので、他の白菜ほど追肥のタイミングがありません。

元肥をたっぷり与えて、早期に栄養がいきわたるようにしましょう。

元肥は、種まきもしくは苗の植え替え1週間前を目安に、土壌に混ぜ込んでおきます。

10aあたり7kgの窒素肥料と、微量要素を与えてください。

ただし、高温期は徒長する可能性がありますので、やや控えましょう。

肥料の与えすぎは軟腐病(なんぷびょう)を引き起こしますので、適量を守りましょう。


水やり・追肥から収穫まで


高温での栽培に強いタイニーシュシュですが、乾燥には注意が必要です。

成長する時期に高温期を迎え、土壌水分が不足すると、チップバーン(心腐れ症・縁腐れ症=葉や芯の一部が壊死することで茶色く変色する生理障害)の発生に注意してください。

育苗期や畑へ植え替えた直後、土の中に根が張るまでは、毎日しっかりと水やりをしましょう。

栽培の後半には、水やりに神経質になる必要はありません。

逆に株元が蒸れないように水やりは控えめにした方がよいでしょう。

収穫は約45日目以降、好みのタイミングでできます。

結球を出荷する場合は頭の部分を押さえてみて、葉が詰まっているのが分かれば収穫時期です。

高温期の収穫遅れには要注意です。特に白菜の軟腐病は湿度が高い環境で発生しやすくなります。

夏場の収穫時期は、迅速に収穫し、必要以上に畑に残しておかないようにしましょう。


タイニーシュシュに発生する病害虫


最後に、タイニーシュシュによくある病害虫について説明します。

よくある病気


特に高温期の栽培では、軟腐病が起こらないように気をつけましょう。

元肥の与えすぎや収穫遅れが発生の原因につながります。

モザイク病、べと病にも注意が必要です。

白菜栽培での注意すべき病害についてはこちらをご覧ください
白菜の栽培では、どのような病気に気をつけるべき?




こんな害虫に注意


虫の食害への対策は必須です。

アブラムシやアオムシが付かないよう、防虫ネットをかけてトンネル栽培するのが無難です。

また栽培期間が短いため、収穫期に薬剤が残るのを避けなければなりません。

病害虫防除の薬剤散布は栽培初期に行うようにし、必ず、各々の薬剤の登録条件を確認して散布するようにしましょう。

白菜栽培での注意すべき害虫についてはこちらをご覧ください
白菜の主な害虫の種類と対策方法は?



このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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