果菜類を中心に少量多品目で野菜を育てていますが、新たに白菜を栽培品目に加えたいと考えています。
栽培方法に関してはとくに問題ないのですが、気になっているのは害虫のことです。
いま育てている作物でも、最初は害虫被害に悩まされたことがあり、事前にしっかりと対策しておきたいです。
事前にできる防虫方法や、特に白菜に付く虫の種類について詳しく教えてください。
果菜類を中心に少量多品目で野菜を育てていますが、新たに白菜を栽培品目に加えたいと考えています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
白菜に害をもたらすアブラムシやダイコンハムシなどの予防は育苗段階から
白菜によく付く虫とその被害例
白菜によく見られる害虫は、以下の6種類があります。
(1)ダイコンハムシ
(2) アブラムシ
(3) ヨトウムシ
(4) コナガ
(5) メイガ
(6) アオムシ
それぞれの特徴とよくある被害例について説明し、最後に対策やポイントについて紹介します。
ダイコンハムシ
・体長 幼虫は6~7ミリメートル、成虫は4ミリメートル
・体色 成虫は光沢のある黒(藍)色
漢字で書くと「葉虫」で、名前の通り葉を食害する虫です。
ハムシにはさまざまな種類がありますが、白菜に付くのは「ダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ)」です。
寒さに強く夏にはあまり見られません。活動時期は秋ごろからで、冬でも温かい日には活動することがあります。
幼虫、成虫とも葉を食べ、葉脈を残して数ミリ単位の穴だらけにしてしまいます。
アブラムシ
・体長 1~3ミリメートル
・体色 黄緑色が多いが、黒褐色や赤(褐)色の個体も
アブラムシはいろいろな植物に被害をもたらしますが、白菜も例外ではありません。
非常に小さい虫ですが、気がつくと大量に発生して植物の汁を吸い、品質を低下させます。また排泄物はすす病の原因となるカビの温床になります。
アブラムシはモザイク病の原因となるウイルスを別の作物から媒介することもあります。
過ごしやすい春や秋の季節が活動時期です。
ヨトウムシ
・体長 老齢幼虫は4~5センチメートル
・体色 若い幼虫は黄緑色で、成長すると褐色・黒褐色
ヨトウムシは漢字で「夜盗虫」と書く、蛾の幼虫です。
名前の通り夜行性の虫で、日中は土の中に潜んでおり、なかなか見つけることができません。
ヨトウムシは葉の裏に卵を産み、若い幼虫は葉の裏を食べて葉の表面を残します。
老齢幼虫になると、葉脈を残して葉をボロボロに食いつくしてしまうだけでなく、柔らかい芽まで被害に遭うこともあります。
コナガ
・体長 成熟幼虫は10ミリメートル
・体色 幼虫は黄褐色~緑色
コナガは蛾の一種で、幼虫がキャベツや白菜などのアブラナ科植物を食害します。
見た目はアオムシに似ています。
葉は裏側から食べ表面が残るため、食害した後を表側から見ると葉が透けて見えます。
苗に発生すると葉が食べ尽くされ生育障害を起こすこともあり、最悪の場合には枯死させるなど、被害が大きくなります。
メイガ
・体長 幼虫は15~20ミリメートル
・体色 幼虫は淡い黄色で褐色の縦筋あり
メイガの中でも「ハイマダラノメイガ」は、白菜を始めとしたアブラナ科の作物に被害をもたらし、別名「ダイコンシンクイムシ」と呼ばれます。
幼虫が葉を食害しますが、表面ではなく中心に侵入して生長点の葉を食べます。このため、苗を枯死させたり生長を止めてしまったりすることがあります。
気温が高く雨の少ない年によく発生するので、そうした年には特に注意が必要です。
アオムシ
・体長 老齢幼虫で30ミリメートル
・体色 緑色
特定の虫ではなく、蝶や蛾の幼虫で体毛がない緑色のものを総称して一般的に「アオムシ」と呼びます。
特にモンシロチョウの幼虫を指すこともあります。
モンシロチョウは花の蜜を吸った後、作物に卵を産みつけます。孵化したアオムシがアブラナ科の野菜を食害します。
ヨトウムシ同様、若い幼虫は葉の裏側を食べますが、成長すると次第に葉全体を食べるようになり、葉脈を残して穴だらけにされていることもあります。
白菜の害虫の防除方法
続いてこれらの害虫被害から白菜を守るための防除方法を説明しましょう。
防虫ネットや寒冷紗で物理的に寄せつけない
特に畑へ植えたばかりの苗が食害されると、白菜の収量や品質を著しく損なう一大事となります。
最も有効な対策は、この時期に物理的に虫を寄せつけないことです。
飛来を防止するためには、作物に防虫ネットや寒冷紗(遮光や防寒効果のある化学繊維の布)をかけておくのがおすすめです。
苗を植えた後は、畝(土を細長く直線状に作った山)の上にトンネル型にフレームを設置してネットや布をかけてください。
端は地面に埋め、完全に遮断しましょう。
植え付け前の育苗期から、セルトレイやポットを防虫ネットや寒冷紗で覆うと、さらに効果が高くなります。
トンネル栽培についてはこちらをご覧ください
「白菜のトンネル栽培はどのようなメリットがあるのかを知りたい」
虫が発生しやすい環境にしない
畑の周囲や畝の間に雑草が生えているような場所であれば要注意です。
雑草は病害虫の格好の棲みかになりますので、苗を植え付ける前に雑草を処分しましょう。
刈り取った草を遠くに移す(畑から外に持ち出す)だけではなく、ごみとして出すなどで完全に無くしてください。
栽培後に土壌を太陽熱などで消毒するのも有効です。
白菜の害虫対策についての注意点
白菜は特に苗の時期に害虫被害に遭うと農家にとって大打撃となります。
育苗や植え付け直後の段階からしっかり対策することが重要です。
<注意点>
・白菜はアブラナ科野菜で連作障害を起こしやすいので、連作は厳禁
・同じ場所での栽培は最低でも2~3年の間隔を開けること
・地植えよりもセルトレイやポットで苗を育てること
・育苗中のセルトレイやポットにも寒冷紗や防虫ネットでカバーすること
・植え付けする土壌に農薬を土にまいておくこと(オルトラン粒剤、アクタラ粒剤5など)
これらを栽培に取り入れて、害虫の被害をできるだけ防ぎましょう。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。