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ブリ養殖における最適な水温を教えてください

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ブリ養殖における最適な水温を教えてください

最近ブリ養殖をはじめた漁師です。先輩から養殖では水温がとても大切だと聞きました。しかし、どのように大切なのかがよく分かりません。

そこで、養殖ブリにおける最適な水温や、低水温期や高水温期における適切な対処の仕方について教えてください。

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

養殖ブリの成長適水温期は18度~28度です

ブリ養殖の最適な水温


ブリ養殖には比較的温暖な環境が必要で、最適な水温は18~28度とされています。この水温にすると、トリプシンなどの消化酵素が活性し、体重増加率が高くなります。

また、魚の体重によっても最適な水温は変わります。

魚の体重

最適な水温

400g

27~28℃

800g

26~27℃

1,500g

25~26℃

4,000g

21~22℃

ブリは最適な水温になる夏から秋にかけて成長し、水温が下がる冬ごろに脂肪を体に蓄積するため体重が増大します。

そして、冬から春にかけては水温が低下しすぎるため成長せず、再び水温が上昇し始めると蓄えた脂肪をエネルギー源として使用するため、体重が減少していきます。


低水温期の注意点


水温が下がり14℃になると、エサは食べますが成長が停滞します。これは、水温の低下により消化酵素も低下し、食べたエサの消化に時間がかかるからです。

特に、生エサと比較してEP(エクストルーダーペレット)などの配合飼料を与えた場合は、消化により時間がかかります。

しかし、養殖ブリの場合、低水温時に消化速度が遅くなるため、体重増加率が劣る傾向があります。

低水温期に配合飼料を与える際は、適水温期と比べて給餌間隔を週3回程度に空けるなどの工夫が必要です。


高水温期の注意点


現在、温暖化により海水温の上昇が問題になっていますが、この影響はブリ養殖においても危惧されます。

水温が28度を越す高水温期では、低水温期と同じく消化酵素の活性が低下し、エサの食いつきが悪くなり、成長が停滞します。

そのため、低水温期と同じく、給餌間隔を空けるとともに、エネルギー源としてパルミチン酸やオレイン酸を含むパーム油を飼料に配合するなどの工夫が必要です。

また、高水温下では海水に酸素が溶け込みにくくなり、溶存酸素量(水に溶けている酸素濃度の量)が低下します。さらに、エサの量が増えるとブリの酸素消費量も多くなります。

水温が高く、溶剤酸素量が極度に低下した場合はエサ止めをするなどの対策をしましょう。


そのほかの水温に関する注意点


網が汚れて目詰まりを起こすと、ブリが酸素欠乏になります。こうした被害を防ぐためにも、定期的に網の洗浄をするなどの対策が必要です。

網の洗浄は、網洗浄機を使うか潜水夫に依頼します。冬場の低水温時は海藻などの付着物が多く、網洗浄機でも落とすことができます。

しかし、夏場の高水温時は貝類などの付着物が多く、網洗浄機で落とすのが難しくなり、潜水夫に依頼することになります。

潜水夫に洗浄を依頼する際は潜水夫の人数が限られているため、網の付着物の量を確認してから依頼するのではなく、あらかじめ決まった間隔で定期的に依頼しましょう。

他にも、30℃に達する高水温での飼育は、肝臓の肥大や肝酵素の血中への流出などが生じてしまいます。

水温が32度以上になると致死することもありますので、細やかな水温管理を行うことが大切です。

養殖する方法や適した水質・水温についてはこちらもご覧ください
ブリの養殖はどのように行われているのでしょうか?
ブリ養殖に適した水質や水温について教えてください

このお悩みの監修者

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。

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