京都府の山裾の傾斜地で栗を栽培しています。かつては原木しいたけを栽培していましたが、親の代に知人の勧めで始めました。
畑は60アールほどの広さで、栽培から出荷まで、ほぼひとりで作業しています。この地域には同時期に栗を始めた農家も多く、自分の畑以外にも栗畑は多くあります。
ある程度は諦めざるを得ませんが、クマやイノシシが栗を食べにくることに毎年悩まされています。
特にクマは枝を折ってしまうこともあり、翌年以降の収穫に直撃するため、被害が大きいです。
現在はトタン板で栗畑を覆っており、クマやイノシシが近づいたら大きな音が出る爆音機も導入しました。
その結果、クマの被害は減りましたが、イノシシには効いていないようです。何かいい方法はないものでしょうか?
(京都府・松山さん/仮名・60代)
山本麻希
株式会社うぃるこ/長岡技術科学大学准教授
地域の栗農家と共同で4段電気柵の設置を検討してみてください
トタン板で農地を囲って爆音を出す装置を設置したところ、クマの被害が減ったとありますが、これはあくまでも一時的に被害が減少している可能性があります。
野生動物は音などの刺激には、すぐに慣れてしまう可能性があるため、電気柵などの痛みを伴う刺激でなければ持続的に忌避効果を維持することはできないと思います。
栗はクマやイノシシの大好物です。相談者さんの近隣にも栗農家さんがいらっしゃるとのことですから、複数の農家で共同して、電気柵の設置を申請することをお勧めします。
イノシシはトタンで防除が可能かもしれませんが、クマは登って侵入してしまうため、あまり効果はないと思います。
8年間、農業を続けるなど、さまざまな条件はありますが、3戸以上の受益者がいれば、国の交付金で電気柵の資材費が100%補助されますので、農家さん自身が費用を負担することはありません。
イノシシとクマ避けには、4段の電気柵を設置してください。電気柵は適切に張って、毎日維持管理する必要があります。4000ボルトより電圧が下がらないよう、定期的に草刈りする必要があります。
イノシシは非常に頭がいいので、トタン板の継ぎ目や、ワイヤーメッシュとの継ぎ目を狙って、体当たりを繰り返すうちに、倒してしまうことがあります。
また、イノシシは穴を掘って侵入することがありますので、物理柵であっても、毎日の見回りが必要です。
また、クマの場合、電気柵が張ってある手前の地面を掘って農地に侵入する場合があります。
その場合は、穴掘り防止用の「トリップライン」という、電気柵から20センチ程度手前に、電気柵を1本張る方法もあります。
この場合も、漏電しないよう、定期的に草刈りすることが重要です。
これらの防除対策は栗や果樹が熟す前に行う必要があります。
もし防除対策をしても、動物が出没しているという場合、その集落内に、他にも野生動物を引き寄せるエサがたくさんあるケースが考えられます。
まず、農作物の残渣がそのまま放置されたりしていないか、集落環境を整備したうえで、守りたい作物の周りに電気柵や罠を設置してください。
加害個体を捕獲するために、箱ワナやくくり罠を設置したら、毎日見回りする必要があります。
イノシシがくくり罠にかかった場合、数日放置してしまうと、足が傷ついて、腱が弱くなり、止めさしの際に足を切って捕獲者を襲ってくることがあるため、できるだけ罠にかかった個体は早く止めさしをする必要があります。