私は東京の大学を卒業後、そのまま都内の企業で働いていたのですが、5年前に脱サラして生まれ故郷である埼玉に戻り、父の後を継いで専業農家になりました。
最初の頃は生活リズムをつかもうとただがむしゃらに手を動かすだけでしたが、数年経ってようやく慣れてくると、今度は「専業農家って、農協や地区の農家仲間とのつながりしかないし、会社員時代よりも視野が狭くなったな」と思うようになりました。
そこで、ビジネスマン向けのセミナーのようなものが農家の経営者向けに開催されているなら、ぜひ受講してみたいのです。
農家の先輩である父や農協の人たちからは教われないことはたくさんあるでしょうし、セミナーに参加することでこれまで接したことのない人たちとのつながりもできて、視野が広がると思うからです。
販促の仕方やSNSの運用の仕方など…ジャンルは問わないのですが、何かありませんか?
最近は実際に会場へ行かなくてもインターネットでセミナーが受講できると思うので、そういったものがあれば手軽でいいのですが。
(埼玉県・茂木さん/仮名・30代)
脇坂真吏
AgriInnovation Design/東神楽大学学長
一般向けのセミナーを受講したほうがメリットも多くおすすめです
「農家をしていると視野が狭くなりがちなので、勉強したい」。素晴らしい考え方です!
私自身も農家さん向けにセミナーやコンサルタントをさせていただいている身ですが、そうした農家さんがもっともっと増えてほしいと思っています。
オンラインで受講可能なセミナーを希望されているようでしたら、こんな考え方をしてみてください。
例えば「効率的な事業経営」や「上手なSNSの発信」「商品をもっと売る方法」「小規模人数での事業経営」というワードを並べた時に、適合しない産業はありません。
「●●大根の栽培方法」のように専門性が確立されている場合を除き、せっかく学ぶ意欲があるのでしたら、農業従事者向けの内容に特化したセミナーではなく、一般的な内容をテーマにしているセミナーを探してみた方がいいかと思います。
そこでしたらオンライン受講なども幅広くやっていますし、他業種や他地域の方とつながることで学べることも多くあります。
私の経験からすると、専門性の高いセミナーを受講すればするほど、視野が狭くなる傾向があるように感じます。
JAや行政、国などが主催となって実施される農業従事者向けのセミナーの多くは、実は農業に特化した話はしていません(少なくとも、私はしていません)。それなのに、受講者が農業者だけとなると、確実に視野が狭くなります。
また、何より良くないのは、農業界にどっぷりつかると「何でも無料」が当たり前になってしまうのです。
もちろんセミナーも有償のものはほぼ見受けられませんし、無償が当たり前になってしまうと「無料だし、やる気は無いけれどとりあえず参加しておこう」という方が多くなります。
学びというものは、お金と時間を割いてこそ真剣になりますし、実になると私は思っています。
また、受講したセミナーが「自分に響かない」「違うかな」と思ったら、同じような内容を扱う別のセミナーを受講したりして、ぴたっとくる講師と出合うことも大事です。
私も受講者の皆さんにいつも話しているのですが、そうすることで、ひとつの意見をすべて鵜呑みにするのではなく、セカンドオピニオンのように別の意見を聞くことができるので、とても有益です。