学生時代に体調を崩した際に食の大切さに気づき、無農薬栽培の野菜などに興味を持ちました。
自分でも安心安全の作物を作りたいと思って農業の世界に飛び込み、神奈川県の農家さんで見習いを始めてから3年ほどになります。
研修している農家さんは野菜のほかにもお米、果物なども扱っており、それなりの種類の作物の育て方を学ぶことができました。
いまでは「望んでいるような農地が見つかれば、すぐにでも独立していいよ」と勧められています。
独立した際には規模を大きくするのではなく、無農薬で旬の野菜をできるだけ丁寧に栽培する健康重視型でいきたいです。
夏ならトマトとかキュウリ、なす、オクラ、秋なら小松菜やほうれん草、里芋やにんじんなど、そして果物はブルーベリーやみかんなどを育てたいと考えています。
しかし、肝心の農地が見つかりません。そこで自分が納得する農地を探しながら、将来のために役に立つような資格を取得しようと考えています。
現在は自動車免許しか持っていないので、まずは大型特殊自動車運転免許や、けん引免許を取得しようと考えています。あとはヘリコプター技能検定も気になっています。
運転系以外の農業関連の資格も日本農業技術検定をはじめ、農業簿記検定や土壌医検定など、いろいろあるようです。
農業とは関係が薄そうですが、健康関連でも意外と役に立ちそうな資格もあるような気がします。
私の目指している農業の後押しになるような資格があれば教えてください。
(東京都・木田さん/仮名・20代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
経営ノウハウを学ぶためにMBA(経営学修士)の学位取得がおすすめです
これからの農業において必ず必要となるのは、経営の専門的な知識です。企業的な経営ノウハウの修得がより強く求められていくでしょう。
現在、農家の数は年々減少しておりますが、内実を見てみると1戸あたり経営面積は拡大しています。
結果として労働力を家族以外から確保していくことが求められるようになり、農業経営を法人化にシフトしていくケースが増えています。
他方、成長産業としての農業に関心が高まるなかで、農業への異業種参入が加速化してきています。
さらに農産物の付加価値化にむけて、農業の6次産業化や農商工連携といった農業の多角経営が求められるようになってきました。
必然的に作物を栽培する知識・技術のみならず、今後は収穫した作物を戦略的に販売して収益を上げていくための知識とノウハウの修得が必要とされてくるわけです。
そこで将来的に必要な資格となると、自ら栽培した作物を戦略的に販売することのできるための資格は必須といえるでしょう。
優れた経営者であることを証明するための資格としてMBA(経営学修士)の学位があれば、金融機関から融資を得たり、取引先から信頼を得るうえでも効果的だと思います。
現在、農家がMBAの資格を有することはとても稀なことですが、農業経営の多角化が進展しているなかで求められる資格になるはずです。
すでに各地においては、「農業版MBAとした人材育成プログラム」が展開されています。
他方で、一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会は、2020年度より「農業経理士」称号認定制度を設けています。
作物を生産するうえで必要な資格も大切ですが、ぜひとも農業経営の展開に有利となる資格の取得も視野に入れていただければと思います。
小寺孝治
東京農業アカデミー 八王子農場長
貸借や経営に関する知識は必須です。資格取得の前に経営方針を構築しましょう
就農場所、育てる作物、農地規模によっても学ぶ内容は異なってきます。
ご相談者さまは農地を探されているということですので、まずは貸借に関する知識を学んでおくべきでしょう。
就農地域の農業委員会などから農地の貸借制度については教えてもらえます。特別な資格ではありませんが、積極的に貸借に関する知識や情報を入手し、就農計画等を作成する必要があります。
実際の農作業において役立ちそうな資格ですと、大型特殊免許は農耕車限定でも良いかもしれません。
また、小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育(通常3トン未満)、刈払機やチェーンソー、農薬安全使用講習会などについての研修は受けておいたほうが良いです。
講習会の詳細については、調べればすぐにわかります。
無農薬栽培を希望されているので不要かもしれませんが、気になってらっしゃるという農薬散布用のヘリコプターやドローンの操縦については、就農場所と農地面積次第となります。
非常に意欲的になっている時期だと思います。どんな資格も役立つと思いますが、まずはしっかりとした経営理念や方針を構築してください。
農業経営は農作業をするだけではありません。避けることができない経営の知識や申告方法などを早いうちから学び、日頃の農作業管理(経営管理)するツールを探して慣れておくと良いと思います。