香川県でパートさん含めて22人くらいの農業法人を経営している農家です。76アールほどの広さでいちご栽培を行っています。
今のところ経営は順調にいっており、インターネットでの販売も軌道に乗ってきました。そのため、事業の拡大を検討しています。
しかし、10ヘクタール以上で水資源が近くにあるなどの条件を満たした土地がなかなか見つけられず困っています。
また、土地が見つかったとしても、近くに住んでいる人をパートさんとして雇用できるのかなど人材確保も不安で、スピード感を持って拡大することができません。
こういった土地問題と雇用問題を同時に解決する方法はあるものでしょうか?
(香川県・田川さん/仮名・40代)
藤野直人
株式会社クロスエイジ 代表取締役
収益の上がる「ユニット(単位)」を決定するのがおすすめです
シンプルにお答えすると、収益の上がる「ユニット(単位)」を決定した方が良いでしょう。
たとえば、レタスを栽培するなら1人の正社員で〇ヘクタール、そこにパートさんが何人で出荷箱数が○箱、単価が〇円/キログラムくらいと仮定して、売上・生産原価・販管費を算出し、どの程度の営業利益が残るかを想定してください。
次にユニット単位の面積を広げていき、それに伴う必要な正社員や作業員を確保していく流れです。
もちろん突然ユニットリーダーを任せるわけにはいかないため、既存ユニットで1~3年育成した後、昇格させていくのがおすすめといえます。
また、自社の経営規模を拡大したいなら「正社員」を増やし、販路などを共同で行うのであれば「独立研修制度」のような形で3年程雇用して、のれん分けで独立してもらうといった切り換え方をすれば、農地を拡大しつつ最適な人員配置が行えるでしょう。
参考までに、福祉作業施設と共同して農場を作り、農家が農場長を育成し、施設外労働や障碍者雇用制度を活用して人員補充しているところも存在するため、後継者不足、あるいは資金面の問題を抱えている場合は異業種の企業と連携するのも効果的です。
山下弘幸
株式会社農テラス代表取締役、農業経営戦略家
事業拡大か顧客の要望を第一にするかのビジョンを明確にしてみてください
まずは自身のビジョンを明確にするところから始めてみましょう。
「将来どうなりたいか」「農業の目的や拡張の理由」といったスタンスを整理しつつ、もし数十億単位の売上を目指すのなら、もっと大胆に迷わず農地の人員の確保を進めなければなりません。
一方、現在事業が好調だから、という理由で拡張したい場合は不安とやる気が入り混じる状態になるため、いったん考え直した方が良いでしょう。
私が知る限り事業拡張でうまくいくのは次のふたつだけです。
・自分の目標達成のため拡張する
・お客さまの要望に応えるために拡張する
ただし、これら以外の目的は利益率の低下、あるいは人員不足や土地で苦しむケースが経験上多くなっていますが、強い思いがあれば農地問題や雇用問題は意外と解決します。
少々精神論になってしまいましたが、小規模事業は経営者のモチベーションに左右されやすいので、ぜひご参考にされてください。