私が住んでいる地域は、稲作がさかんな地域でしたが、減反や過疎化が影響して離農者が増え続けています。
集落の有志で耕作放棄される農地を受け入れようと、農事組合法人を設立して約20年が経ちましたが、役員たちも高齢で農作業がしんどくなってきました。
現在の構成員約30名のうち、作業に従事する役員は5名ほどです。
役員や農機オペレーターなど、後継者の育成が課題になっていますが、現状では有効な打開策もありません。
新規就農を考えている人など、若い現役世代に農事組合法人に入ってほしいのですが、加入を促す方法はありますか?
(新潟県・末崎さん/仮名・70代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
親世代の意見より、次代を担う後継者世代の意見を尊重することが重要です
集落営農も立ち上げから15年ほど経過し、「法人化したものの後継者難」という悩みは全国から届いています。
団塊の世代が全員75歳を超える2025年をピークとして、ここ数年で同様の問題はさらに増えるでしょう。
さて、私が全農職員時代に作成した「事業承継ブック 集落営農版」をご紹介します。まさにこの問題意識を持って作ったものです。詳細は「事業承継支援への取り組み」をご参照ください。
この冊子の解説が、相談者様へのお返事となると思います。以下の通りです。
この冊子は、大きく2つのコンセプトを意識して作りました。
1つは「後継者世代の意見を反映させること」です。
消極的に参加するという後継者が多い中、参加を躊躇する方は少なくありません。現実問題として、その集落の農地の行く末は、最終的に後継者世代の問題ですから、彼らの正直な意見を反映させてあげたいのです。
もう1つは「集落の現状を見える化」です。
後継者世代からすると、集落と集落営農組織の現状を理解できていないのが現状です。漠然と高齢化を認識してはいても、どれくらいの高齢化で、あと何年持つのか、といった詳細まで把握できていないでしょう。
そこで、集落の人口ピラミッドを作ったり、所有者の年齢や耕作可能年数で農地を地図でマッピングしたり、という作業を通じて現状を見える化し、後継者世代が考える材料にしてほしいという意図です。
繰り返しになりますが、親世代よりも、後継者世代がどうしたいのかが重要です。日本の多くの集落では人口自体が減少していくので、限られた人でやっていく時代が絶対に来ます。
そのときに誰が担うのか、集落の中の人なのか、集落の外へ出て探すのか。また、あるいはJA出資法人や大規模農業法人なのか、はたまた集落営農組織同士のさらなる合併、広域化、ネットワーク化なのか、農事組合法人を株式会社に転換するのか、という方向に進んでいくだろうと考えています。