埼玉県でいちごの養液栽培をしています。助成金を活用しながら「よつぼし」「紅ほっぺ」「恋みのり」などを育てています。
ITに詳しい若いスタッフが新しい技術を取り入れてくれるので、非常に助かっています。そのため、まわりからも「スマート農業」などについて相談されることが増えています。
先日、知り合いの運送会社が会社をたたむことになり、トラックのターミナル跡地の有効活用ができないかと相談をうけました。
パッと頭に浮かんだのは、海外で話題になっている「垂直農業」です。
ビルや倉庫を使った農業だということはわかっていますが、日本での垂直農業の現状がまったくわかりません。
実際、日本で導入することは可能なのでしょうか?収益の面なども含めてわからないことばかりなので、どこに相談して良いのかも教えて欲しいです。
(埼玉県・新井さん/仮名・40代)
道法正徳
グリーングラス
光や土壌にこだわらない垂直農法は、いちご栽培との相性も抜群です
結論から先に言うと、日本で垂直農業(垂直農法)は可能です。そもそも垂直農法は日本が発祥で、それが海外に広まっただけなんです。
私が提唱している垂直農法「DOHO STYLE」とは、枝を垂直にして葉を縛り育てる農法です。植物は本来、光がよく当たる、良い肥料が必要と言われてきましたが、そもそも植物は光で育っているわけではありません。
自ら植物ホルモンを作って成長しているのです。
つまり、枝を垂直に縛る垂直農法によって植物ホルモンが刺激されると、作物自体が強くなります。
作物自体が強くなると、自然と肥料・農薬も不要になり、光を重要視しなくても元気に育つようになります。
しかし、光がまったくゼロで良いわけではありません。植物は光合成によってエネルギーの元になるATP(アデノシン三リン酸)を作り出すので、ある程度は必要です。
しかし、例えばみかんなどの果樹に必要な光は4万ルクスです。これは明るい曇り空程度です。これ以上に光が強くなると植物は耐えきれなくなってしまいます。つまり、太陽の光は無視して良いのです。
もしご相談者さまがターミナル跡地でいちごを栽培する場合、垂直農法は光にも土壌にもこだわる必要がないので相性が良いと思います。
肥料・農薬を使用しないので収量は若干ダウンしますが、糖度が上がり、付加価値がついて価格も上げられるはずです。いちご栽培における垂直農法のポイントは、ランナー(新芽)をかきとらず、吊り上げることです。
一般的にはランナーにいちごの養分がいってしまうのでランナーをかきとってしまうのですが、芽をとってしまうと根が出ない。だからうどん粉病などの病気にもかかってしまうのです。
最初のうちは葉しか出ないので、まずそれを垂直に立てる。実がなってランナーが出てきたら、それを針金や糸を利用して吊り上げる。そうするとランナーが元気になるから根もたくさん出てきます。
垂直農法「DOHO STYLE」については、『道法スタイル 野菜の垂直仕立て栽培』で詳しく解説しています。また学びと交流の場「Doho style labo」というコミュニティもあるので、ぜひご参加ください。