千葉県で脱サラして、小さな農地ながら露地で有機栽培に挑戦しています。
主力作物のひとつがカブで、3月頃からの春まき、9月頃からの秋まきの両方を行っており、小カブから大カブまで育てています。
品種は「CRもちばな」や「スワン」などがメインです。
今年は農作業をなるべく合理的にしようと考え、いままでやっていた株の間隔を広めにして、間引き作業を省略してみました。
具体的には5cmほどの株間だったものを、最初から20cmほどに広げました。
やってみると全体的に大ぶりに成長したので喜んでいたのですが、いざ収穫となったタイミングで亀裂が入ってしまいました。
亀裂が入ったカブは、最終的に全体の2割程度です。
土作りなどは何も変えていませんが、亀裂の原因は育ち過ぎのせいでしょうか?
いままでカブに亀裂が入るようなことはなかったのですが…。
(千葉県・安藤さん/仮名・30代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
カブや大根のような根菜類では極度に乾燥した土壌に、急に雨が降ったり、水をやると裂根しやすくなります
カブの栽培で、2割も亀裂が入ってしまった原因ですが、普及しているカブの品種は比較的裂根しにくいものが多くなっているかと思います。
それにもかかわらず、2023年に限って裂根した原因を考えてみたいと思います。
カブや大根のような根菜類では土壌水分の急激な変化、すなわち極度に乾燥して、土壌に急に水分が与えられたような場合に裂根が発生しやすくなります。
2023年の秋から年末にかけて、相談者の方のお住まいの関東南部ではかなり降水量が少ない状態の期間があったかと思われます。
同時に気温もやや高めに推移し、生育は順調だったと思われます。
そのような状況で久しぶりに降雨、あるいは灌水によって土壌に多くの水分が急激に供給されると、カブは急速に吸水して裂根が生じてしまう可能性が高いと思われます。
これを防ぐためには、土壌がカラカラの極度な乾燥状態になる前に灌水をして、土壌水分の変動を少なくするような工夫が必要かと思われます。
すなわち、極度な乾燥にならないように適度な灌水が必要だったのではないかと思われます。
土壌水分の急激な変動を抑えるには土壌の状態にも気を留める必要があります。
土壌の団粒構造を保ち、保水性・排水性の良い圃場にしておけば被害の軽減につながるので、普段から有機物を施用することが大切です。
このことについては中・長期的な視点で必要なことですので、今回の質問の直接的な回答にはならないかもしれませんが、気をつけたい点です。
もう一点ですが、間引きをしないように栽培したら大きくなったとのことですが、大根も含めて秋冬期の栽培では、間引きが必要なほど株同士が接近していると、茎葉部が重なり合って十分な光合成を行いにくくなってしまいます。
同時に日射が土壌面に入射しにくくなり、地温上昇の面でも不利となります。
播種時の労力、発芽不良等での欠株のリスクは上昇しますが、根部を太らせるには、間引きをしないような1粒播種法は生育を促進するのに有利な栽培法と言えるでしょう。
ただし裂根の発生は収穫期近くになって、根が肥大してきた時に多くなる傾向があります。
したがって根部の生育を促進させて、大きく育てたことが裂根の発生を高めたことも要因の一つなのかもしれません。
収穫期を引き延ばさず、もう少し早めに適期収穫するのが良かったかもしれません。