千葉県で野菜を作って20年ほどになります。
農業を始めたころから作り続けているカブが主力作物です。
春から秋にかけて、ほぼ1年を通して作っています。
大きさは小カブから中カブが基本で、最大でも8センチ大で収穫するようにしています。
なによりツルツルでふっくらした丸さが自慢です。おかげさまで私のカブのファンもいるほどです。
しかし、ここ数年うまくいかないことが増えてきました。とくに目立つのが亀裂です。
今まではそれほど裂根しなかったのですが、最近は多いときで3分の1くらいのカブが割れてしまうときもあります。
さらにス(割れや空洞)も入るようになってきました。天候不順が原因のひとつであることは間違いないでしょうが、ほかに考えられる原因はありますでしょうか?
今までカブ作りに自信を持ってきたこともあり、とても困惑しています。
ちなみに土づくりは苦土石灰と堆肥でやってきています。間引きも数度に分けて丁寧に行っています。
もちろん害虫対策も万全で、大きな被害は発生していません。
(千葉県・小林健太郎さん/仮名・40代)
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
カブは苦土石灰のやりすぎに注意。時間をかけて畑をケアしていきましょう
以前はツルツルでふっくらしたカブだったということでしたら、何らかの環境の変化が起きていることになります。
土壌分析結果を見ていないので断定はできませんが、カブ農家さんでよく見受けられる事例があります。該当するかどうかご確認ください。
「カブはカルシウムをよく好むから」という理由で、苦土石灰をたっぷりあげ続けている農家さんは多くいらっしゃいます。
相談者様も同じように土づくりは苦土石灰と堆肥を使っていらっしゃるようですね。与えている量はわかりませんが、人間でも食べすぎは生活習慣病のもとになるのと同様、野菜も長年に渡って苦土石灰をやりすぎると、さまざまな生理障害を引き起こします。
カルシウムの場合、雨などでも流れていきにくいので、長年の蓄積で過剰状態になってしまうことも多いのです。
肥料には「拮抗作用(きっこうさよう)」といって、肥料成分が過剰状態だと、互いにその効果を打ち消し合う作用が働いてしまう場合があります。例えばカルシウムが過剰な状態だと、ホウ素やマグネシウム(苦土)の吸収を阻害してしまいます(下図参照)。
つまりホウ素をしっかりやっているつもりでも、過剰なカルシウムがホウ素吸収を抑えてしまい、結果的にホウ素欠乏による裂根が見られる場合があります。当然ですが、肌ツヤや形も悪くなってしまいます。
また、堆肥をお使いとのことですので、ぜひ一緒に保肥力や保水や排水性を考えた土壌改良材も併せて活用してください。
カブは生育中の水分量が乱高下すると裂根することもあります。土壌改良材は即効性はありませんが、長く畑を使い続けることによって引き起こされるトラブルの予防になります。
2年に1回でもかまいません。水はけや水持ち、通気性、土の硬さなども意識しながら、できる範囲で畑をケアしていってください。