長野県で、サニーレタスを栽培しています。気をつけて栽培しているものの、毎年センチュウの被害にあってしまいます。
センチュウにはたくさんの種類があり、私の場合はサニーレタスの根に黄色い結節(しこり)を作って生育を阻害する症状に悩まされています。
農業仲間から聞いた対処法を行なっており、いまは「バスアミド」で 密度を減らすようにしています。
しかし、正直なところバスアミドとクロピク、バイデートの薬剤の成分や効き方について正確な知識はありません。
どの程度連続で使用してよいものなのでしょうか?また、対処するための基本的な知識を教えてください。
(長野県・田中さん/仮名・30代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
燻蒸剤と粒剤があり、効果や環境への負荷が異なります。連続使用は避けて
サニーレタスの根に黄色い結節ができているのですね。それは恐らく「ネグサレセンチュウ」による被害です。ネグサレセンチュウは暖地系のセンチュウで、北海道を除いた地域で発生します。センチュウは殺線虫剤を使用することで被害を軽減でき、条件が揃えば無くすこともできます。
殺線虫剤には2つのタイプがあり、1つが「燻蒸剤」でもう1つは「粒剤」と呼ばれます。燻蒸剤は土壌の中でガス化し、土壌の隅々まで行き届き、微生物やセンチュウ、雑草の種を殺します。この作用に選択性はありません。有害な生物のみならず、有用な生物も殺されてしまいます。
燻蒸剤には2つのタイプがあり、1つは「クロルピクリン」や「1,3-ジクロロプロペン」が有効成分の「D-D剤」で、土壌に注ぐと、速やかにガス化するものです。
もう1つは「ダゾメット剤」が有効成分の「バスアミド」や、「カーバムナトリウム塩」を含む「キルパー液剤」のように、毒性のない液体の燻蒸成分が、土壌中で数時間以上経て加水分解されることで殺菌、殺虫成分「メチルイソチオシアネート」に変化するというものです。
メチルイソチオシアネートがガス化して、クロルピクリンと同様、様々な生物を無差別に殺します。刺激臭が少ないのが特徴です。
殺線虫剤のもう1つのタイプは粒剤と呼ばれ、粒状となっていて肥料のように土壌に散布して、耕耘機で耕すものです。
「バイデート」は粒剤タイプの殺線虫剤で、有効成分は「オキサミル」と呼ばれる「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」です。神経を麻痺させて、植物の根に感染できないようにします。粒剤は主に植物寄生性センチュウに作用し、自活性センチュウに対する影響が少なく、バクテリアやカビにはまったく影響しないので、環境に優しい殺線虫剤です。
連続使用についてですが、燻蒸剤は繰り返し使用しても殺虫という効果そのものは変化しません。むしろ、土壌中の有用な微生物や自活性センチュウも殺してしまうので、土壌が本来持っている病気を防ぐ力が減ってしまうため、毎年使用しないと甚大な発病が見られるケースが多くなります。
燻蒸剤は環境への影響だけでなく、散布する人への影響も大きいので、リスクが増えるというデメリットがあります。
一方、粒剤の方は、繰り返し使用すると、薬剤の効果が小さくなる 「不効化」という現象が世界的に知られています。正確に何年とは言えないのですが、3〜4年で見られるようになったという報告例があります。そのため、粒剤を使う場合、ローテーションで毎年、薬剤を変える必要があります。
大量投入については、農薬は規定通りの量で、最大の効果が得られるように製剤化されているので、規定以上に散布するのは無駄です。燻蒸剤はガス化するので残留の心配はありませんが、粒剤の場合、大量投入するとその分だけ、長い間土壌中に残留しますので、作物残留へのリスクが高まります。